実用版ドビュッシーピアノ作品全集Ⅱ
小品集1
中井 正子 校訂
■菊倍判/48ページ
■定価:本体1,300円+税
■ISBN 978-4-88364-192-5
本場の本物のドビュッシーを正しく伝えるべく、演奏に講座に大活躍の中井正子先生による実用版楽譜の第2弾。
綿密な校訂、指使いやペダリングの補足は、学習者にとって大きな助けとなるでしょう。
ピアノ学習者がドビュッシーの音楽をなるべく理解しやすく学べるように意図した実用版。
現在一般的に使われているジョベール版を底本とし、フランスにおいておこなわれている伝統的な修正を校訂に採用。定本に見られる明らかな印刷上の誤りを訂正し、校訂者による補足(臨時記号、音価、フレーズ)はすべて[ ]で明示してあります。また、フランス語による楽譜は( )内に意訳を記載。指使いとペダリングは、学習者のために一般的、実用的と思われるものを付しました。
収録曲
ボヘミア舞曲/マズルカ/夢/ダンス/バラード/ロマンティックなワルツ/夜想曲
解説
ドビュッシー初期のピアノ作品 小鍛冶邦隆ドビュッシー小品集1に収録されている7曲は、1880年に作曲された《ボヘミア舞曲》以外、1890年から1892年に作曲されたと考えられる。しかしながら《ボヘミア舞曲》は、ドビュッシーの死後14年後の1932年に、また他の5曲(マズルカ以外)も、1891年から1895年に出版されたあと、1903年から1907年にかけて出版されている。
《マズルカ》については、1891年にシュダン社に譲渡されたが、1903年まで出版されなかった。
これら初期のピアノ小品が1903年以後再版(あるいは初めて出版)された理由としては、1902年にパリ・オペラコミック座で初演された《ペレアスとメリザンド》の成功で、パリ音楽界の著名人となったドビュッシーの、アマチュア向けに作曲された初期ピアノ小品を普及することで利益をあげようとする出版社の思惑があったと思われる(はやり初期の作品である《2つのアラベスク》、《ベルガマスク組曲》の出版についても同様である)。
ドビュッシー自身は、これらの小品の価値については否定的であったが、いくらかの変更を加え出版させた。
《版画》から《映像》第1、2集の作曲に至る期間に出版されたこれらの小品は、広く愛好家から受け入れられ、好んで演奏されるレパートリーとして定着してゆく。
初期小品の音楽は、19世紀末の上流社会の音楽サロンにおける歌曲やピアノ音楽の趣味を反映して、物憂げでロマンティックな雰囲気に満ちている。また、世紀末から20世紀初頭に流行したアール・ヌーボー様式に見られる、植物の曲線を思わせる女性的な装飾的工芸品や芸術の特徴を持っている。これらの小品は、常套的な三部形式を主に用いた、初心者にも演奏できる平易な技術で書かれてはいても、当時のドビュッシーの即興性に満ちた大胆で清新な和声的着想と、本能的な形式発見の能力が随所に見られる音楽である。以下それぞれの小品について簡単にしるす。
《ボヘミア舞曲》
1880年7月から11月、18歳のドビュッシーは、チャイコフスキーのパトロン(ヌ)として知られるロシア人富豪フォン・メック夫人の音楽サロンの雇われピアニストとしてスイス、フランス、イタリアに滞在した。その間に作曲されたと思われるこのピアノ小品は、ボヘミア的(東ヨーロッパ的)、ロシア的な音楽的アクセントが聞かれる。フォン・メック夫人がこの作品を送付したチャイコフスキーは「好ましいが、あまりに短く、主題の完結性がなく、形式的に貧弱で統一性に欠ける」と評した。しかしながら、abcaという接続曲風(ポプリ)の形式の中で、c後半がトリオに相当する、本能的なバランス感覚が見られる。また、《ダンス》同様に、バレエ的な情景(シーン)を喚起させるギャラントな(華やかな)音楽は、ドビュッシーの音楽的源泉の一つである。1932年にフォン・メック家からドイツのショット社に売り渡され出版されたが、ドビュッシーの最初期作品と比較すると、記譜法等に出版社による一部編集の可能性があるとされる。
(つづきは本楽譜をご覧下さい。)
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