2018年2月号スペシャルトーク
2月、オペラ「夕鶴」で主役のつう役を演じる 伊藤 晴
日本オペラ協会が兵庫県立芸術文化センターとの共同プロダクション公演の演目に選んだのは、オペラ『夕鶴』。民話「鶴の恩返し」を題材に描かれた日本オペラの代表作品であり、高い人気を誇るこの舞台で初主役を務めるのが新鋭のソプラノ歌手・伊藤晴さんだ。偉大な作品への意気込み、演じる「つう」への思いなどうかがった。
けなげさと激しさの対比を表現したい
ーーー日本オペラ協会の公演では、今回が初めての主演だとか?
はい。お話をいただいたときは本当に信じられない思いで、偉大な作品である『夕鶴』のつう役を演じる責任の重さと、うれしい気持ちとが半分づつあります。今は歌稽古の真っ最中なのですが、指揮の園田隆一郎さんが私の声の良いところを活かそうとしてくださり、歌手を尊重しながらも率直なご意見をくださるので、とても実りあるものになっています。
ーーー「つう」という役柄に、どんな印象をお持ちですか?
最初は、淡い藍色や薄紫色のようなイメージでしたが、稽古を重ねていくうちに考えが変わりました。純粋な愛を持ったはかなげな女性ではあるけれど、激しい面もあります。演出の岩田達宗さんも「生物の垣根を越えたすさまじい愛を表現する」とおっしゃっていました。つうには、人間の次元を越えた強さや真っすぐさがあって、黒の暗さの中に赤が光るようなカラーが彼女の心の中にあるんじゃないかと想像しています。
ーーーお気に入りの場面はありますか?
私が好きなのは、第一幕の「こうしてじっとあんたに抱かれていると」のところです。この作品の中で、つうと与ひょうにとって一番幸せな場面ですから。その後、第一幕の終わりにつうのアリア「これなんだわ、みんなこれのためなんだ、お金、お金」があります。自分の身を削ることになるけれど、与ひょうのために布を織ることを強く決心していくさまを歌っているのですが、『蝶々夫人』の自決のシーンに似ている気がします。
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このつづきは月刊ハンナ2018年2月号の巻頭カラーでどうぞ!
ミラノ、パリへの留学中の厳しいレッスンのお話もあり、最後にハンナ読者へのメッセージもいただきました!