横山幸雄ピアノQ&A136 から  Q46 打鍵スピード

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Q46. 先日、ブラームスの小品を弾いていたら、打鍵スピードを遅くしなさいと言われました。「打鍵スピードが速い遅い」とは、具体的にどのようなことをいうのでしょうか。



 簡単に言えば、打鍵の速度が速ければ、ハンマーが弦に当たる速度も必然的に速くなって大きな音になり、逆に打鍵速度が遅ければ、弦にハンマーがゆっくり当たることによって小さな音になる。ただ、実際にはそのような単純なものではなく、速度というものは動きの中でとらえられているものであるから、同じ速さでも、加速をして得られたものなのか、減速をして得られたものかによって変わってくるはずだ。

 ハンマーというのはフェルトで出来ているためハンマーが弦にどう当たるかで微妙な音色の差が出てくる。また、ハンマーを支持する部分は木で出来ていて、結構しなりの運動をするので、そのことも弦とハンマーの当たり方に違いが生じ、最終的には音色にだいぶ影響がある。ちなみに、体格の大きな人からは、わりとたっぷりとした豊かな音色が出てきて、やせた小柄な人からは、比較的シャープな音が出てくると感じる人が多いと思うが、これはたぶん指先の弾力性からくるものではないかと思う。つまり、体格が大きく指先にクッションがあれば、止まっている鍵盤を打つときに指先のクッションがその衝撃を吸収して、より滑らかに力が伝わるのであろう。

 ところで質問にある打鍵速度を遅くするとは、このことを指しているのではと思う。実際にはハンマーの動きはじめをゆっくりにすることによって得られる音色を目指しているのだろう。ブラームスの作品には必須のタッチだ。ちなみに単に打鍵速度を遅くといったら、小さな音になるだけなのは初めに書いた通りで、そのあたりを混同しないように。




「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 4 テクニック」

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