横山幸雄ピアノQ&A136 から  Q11 ピアノを学ぶ上で大切なこと

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Q11. ピアノの勉強を始めて20年近くになります。これからも一生続けていきたいと思っていますが、どうすればもっとよい演奏ができるようになるでしょうか。


 人間の体や指というものは、どんな天才であっても、もとからピアノを弾くためだけにあるわけではない。だから当然ピアノで適切な音楽表現をするためには、ある程度訓練が必要となる。ただ、そこばかりに偏りすぎると、音楽の大事な要素である音楽を感じる楽しみがなくなってしまうだろう。

 訓練という部分と、感じること楽しむこと、この二つの要素のバランスが非常に難しいと思う。どちらかというと、まるで何かの修行のように訓練に重点を置きすぎている人が多いような気がする。
 いったい何のための訓練なのか。それは、もう一方の要素である楽しむため、感じたものを表現するためである。だから、それらを打ち消してしまうようでは意味がない。

 なかには一人で好きに弾いている人もいると思うが、ピアノを勉強するときは、やはり先生につく場合が多いだろう。Q12でも触れるが、その場合においても、ただ先生に言われることをやみくもにやっているだけでは、あまり進歩がない。まずは「自分で感じたものを表現する」という意識を持って、音楽というものをとらえてほしい。
 そのためにも非常に重要な要素となるのが、「いい音楽をたくさん聴いて感動すること」だ。ピアノを勉強している人のなかには、ピアノ曲しか聴かない人、あるいは自分が勉強している曲以外はあまり聴かない人、さらには演奏会にもあまり行かず、CDもほとんど聴かない人という人さえいるらしい。

 ショパンのような特殊な例を除けば、作曲家のほとんどはさまざまな楽器のためにいろいろな作品を書いている。例えばベートーヴェンであれば、その作曲活動の大きな柱にはピアノソナタ以外に弦楽四重奏や交響曲があったわけで、それらを知らなければ、ピアノソナタを理解することも難しい。そういう教育的な見地ではなくても、オーケストラやオペラ、室内楽、歌曲などの分野にも素晴らしい作品はたくさんある。「音楽が好き」と思う感性を持っている人ならば、それらそれぞれに魅力を感じるはずだ。

 そういった意味で、あらゆる楽器あらゆる時代の音楽を聴くことは、勉強するときにも、また音楽を聴いて理解するときにもプラスになるし、音楽的な感受性を豊かにし、芸術的な感性を磨くためにもとても有効なことだと思う。


「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 2 学ぶ・教える」

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