
合唱指揮者からのワンポイントアドバイス
難しい ü、ö は発声練習でマスターしよう 日本合唱指揮者協会副理事長 辻 正行
私が「歓喜の歌」の指導をするようになってすでに25年になりますが、各地の合唱団を見てきますと、練習の効率の良し悪しは、指導者がその合唱団に合った指導法をどのくらいつかんでいるかにかかっているように思います。私がかつて指導した合唱団の場合、まったく初めての方ばかりでしたが、1回に2時間半の練習を10回やっただけで暗譜し、本番に臨みました。それでもやればできるのです。そこで、効率よく練習する一例を紹介します。
ドイツ語が初めての人にとって、ü や ö の発音はやっかいなもののひとつです。これを発声練習にとり入れてマスターしようというのが私の提案です。
ü、öは、歌詞の中に出てきてもすぐには正しい発音をつかめません。そこで
と発声練習します。 ü は u を発音する口の形をつくって i と発声し、ö は o の形で e と発声します。この練習なら、口の形はそのままで発声だけかえればよいのです。半音ずつ上げながらくり返してください。
同じ要領で、ü や ö を含む単語を入れて発音練習します。
このようにして、曲の中の難しい部分をくり返し練習すれば、練習に変化をつけるとともに、発音と発声の練習にもなります。
言葉を入れた発声練習をしますと、アーでなら歌えるが、言葉が入るととたんに歌えなくなるという欠陥も解消でき、発声練習は曲の練習前のウォーミングアップ、といった気持ちのゆるみもなくなります。
それでも、曲の中ではつい発音が甘くなりがちですので、次のようなくふうをするとよいと思います。ドイツ語に日本語のカナルビをつけるとき、ö は o の形でエを発音しますからカナルビのエをOで囲んでシェ(O)ーネる、ゲ(O)ッテるフンケンのように示し、同じように ü はブリィ(U)ーデる、フリィ(U)ーゲルとイをUで囲みます。語尾の子音のーm、ーnも印刷では見落としやすいので、上からーM、ーNと主時でなぞっておくと目立ちます。
631小説からのIhr stürzt nieder は p でかなり困難な部分です。こういった箇所は、sf や ff の部分の合間に、毎回はさんで繰り返し分解練習をしますと、のどを休ませることができると同時に、困難な箇所を克服することもできます。
こんなくふうをとり入れて、効率よく練習していただけたらと思います。
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オーフロイデ! ベートーヴェン交響曲第九番〜歓喜の歌の発音とうたいかた〜 もくじ
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