フロイデ! ベートーヴェン交響曲第九番〜歓喜の歌の発音とうたいかた〜 実践編  音楽的フレーズごとにドイツ語の意味を理解しよう 日本合唱指揮者協会副理事長 関屋 晋

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合唱指揮者からのワンポイントアドバイス

音楽的フレーズごとにドイツ語の意味を理解しよう
日本合唱指揮者協会副理事長 関屋 晋

 
 ドイツ語発音については、皆さんかなり努力しているようすがうかがえますが、気になるのは、発音はできていても意味を理解していないかたがけっこういることです。意味を理解するといっても、単語テストのためではありませんから、個々の単語の意味にとらわれすぎず、音楽上のフレーズごとに意味を大きくつかむことがより重要です。
 「浜辺の歌」を例にとりますと、私たちは「あした」「浜辺」「さまよう」という単語の意味をいちいち考えてしまうわけではなく、「あした浜辺をさまよえば」をひとつとして、内容を感じとります。しかもその際、「あした浜辺をさまよう」のか、「あした浜辺をさまよう」のか、「あした浜辺をさまよう」のか、作曲者はどこに力をいれて音楽をつくったのかを考えて歌うことが必要です。「歓喜の歌」の Alle Menschen werden Brüder という一節をとっても、個々の単語の意味にこだわるより、この一節全体で「すべての人々が兄弟になる」と覚えていることの方が適切なのです。さらに、そこに表現されたベートーヴェンの精神も理解したいものです。この一節には、耳が聞こえず人を信じられなくなり、人とかかわることをうとましいとさえ感じていたベートーヴェンが、心の奥底に抱いていた願い、つまり、真に人々と語りあい心を通わせあいたいという切なる願いがこめられているわけです。一節ごとに理解して歌うなら、 Freude, schöner, と単語がぶつ切れになった歌い方にはならないはずです。
 ぶつ切れの歌い方になりがちなのは、日本人がどうしても文字から入って読むことを考えてしまい、耳で聴いて語感をつかむことに慣れないせいかもしれません。語感をつかむというのは、いろいろな外国語の会話のテープをきいたら、これはドイツ語だ! と聞いただけでわかるようになることといってもいいでしょう。会話テープやラジオ・テレビのドイツ語講座を流して聞いたり、ドイツ語の歌を聴いたり歌ったりして、ドイツ語らしさを感覚的に身につけてほしいものです。その方が《第九》ばかりを何百回も聴くより効果があります。
 「歓喜の歌」はベートーヴェンが30年来あたため続け、どうしてもそこから立ち去れなかったモチーフであり、オーケストラだけでは表現しきれず人間の声がどうしても必要になった、それだけの深い内容のある作品です。それにふさわしい歌い方を皆さん自身で考えだしていただきたいものです。
 それでも、意気込みだけでは歌えません。人数でごまかしてこと足りる時期は過ぎました。ひとりひとりが努力してうまくならなければ、いい演奏はできません。指揮者からの助言をしっかりとうけとめ、それをマスターする誠実な努力を続けてください。

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