横山幸雄ピアノQ&A 136 から Q8 ピアノ演奏の大変さ

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伴奏や室内楽をしていて、他の楽器と比べてピアノ演奏において特徴的な点、努力すべき点を感じることはありますか。

 

 ピアノという楽器は、Q1で説明したように、オーケストラのさまざまな楽器の役割を独りでできるような可能性を持っているが、それと同時にまた、歌の伴奏やヴァイオリンとの二重奏、三人がソリストとしてお互いに主張しあうピアノトリオなどのようにいろいろな形で演奏することができる。

 よく歌と一緒に弾く場合、簡単に「伴奏」と言ってしまうけれども、実際にはピアノが持つ役割は大きい。歌は「メロディ+α」ぐらいの要素しか持っていないけれども、それ以外の要素はすべてピアノが担うわけで、つまり音楽的な全体の支えや流れはピアノの伴奏がつくり上げるものであるということだ。要するに、「どういうふうに弾いたら一番歌いやすいかを感じとって、歌いたいように歌いやすいように流れを作ってあげる」ことが伴奏するときのピアニストの役目となる。ただ単に「歌に合わせて演奏する」ということとはまるで違う。

 これは基本的にヴァイオリンとともに演奏するときも同じ。現在日本語では「ヴァイオリンソナタ」と言っているものも、もとは「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ」で、ピアノを演奏することを主としていた人たちがヴァイオリンと演奏するために書いたもの。音楽的にも、ヴァイオリンは単にピアノ(というよりその前身の鍵盤楽器)のオブリガート的な役割にすぎなかったのが、徐々にヴァイオリンの役割や存在感が強くなっていったという歴史的な流れがある。いずれにせよ、ピアノのほうが音楽的な支えと主導権を握っていると僕自身は考えている。「主導権」といっても、必ずしも表に出ることを意味するわけではない。ヴァイオリンのメロディの箇所は当然ヴァイオリンが表に出ることになるが、それを陰で支えて陰で主導していくのはピアノ。音楽全体の中でピアノの果たす役割は非常に大きい。

 これがピアノコンチェルトになると、役割が逆転する。室内楽や歌の伴奏のときのピアノの役目をオーケストラが受け持つ一方で、ヴァイオリンや歌などの表向き主役の役目をピアノが担うことになるのだ。

 このようにピアノというのは、七変化的な要素がいろいろあるから、それらをすべて理解するのは大変だ。世界的に見てもヴァイオリニストのほうが早い年齢からどんどん世に出てくる傾向があるが、これはある程度ピアノ伴奏という音楽的に支えてくれる人がいることによって、テクニック的な弾く能力が長け、楽器をうまく鳴らし歌わせることができれば、音楽として成り立つからだ。それに対して、ピアノは指揮者に匹敵するような膨大な音楽情報量を消化した上で、オーケストラの1人ひとりのプレーヤーのような表現能力と、されにそれぞれもバランス良くまとめなければいけないという難しさを持っている。だから、一人前の演奏家になるのにある程度の年月と経験が必要となるのだろう。

 「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 1 ピアノの楽しみ」より

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