横山幸雄ピアノQ&A136 から  Q56 ペダルの深さ

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Q56. 先日レッスンで「ペダルはもっと浅く踏みなさい」と注意されました。それまでペダルは下までしっかり踏むものだと思っていたのですが・・・。



 ペダルは半分くらいまで踏めば、すでにペダルがかかっている状態になり、そこから下はいわゆる遊びになっているのに気づくだろう。それは最強音のときに弦の振幅が最大になっても、弦にダンパーがぶつからないように、余力を残しているという意味もある。だが、実際に僕がピアノで弾いているときには、ペダルの底に足がついていると感じることは、「踏んだ一瞬にたまたま底に触ってしまった」というケース以外にはまずない。いったん踏んだペダルはいつでもすばやく踏みかえができるように、弦とダンパーが触れるギリギリのところまでペダルを戻してくる。それによってすばやい踏みかえが可能になり、瞬間的な踏みかえでも濁らなくなるのだ。

 初心者によく見られるのは、いざ上げようと思ったときに、思いっきり下まで踏んでしまっているために、瞬間的に上げようとしても、振動している弦を止めるわけだから、弦に一瞬ダンパーが触れただけでは音が止まらないというような場合だ。そこで止まるまで待っていれば音楽の流れが止まってしまうか、次のペダルを踏むタイミングが遅れてしまう。そのためにも最小限の踏みかえ幅でペダルが踏めるような訓練もしておいたほうがいいだろう。

 ペダルを踏む時の速度は、音楽に対してあまり影響のないことが多いが、ペダルを離す速度、つまりペダルを上げてくる速度は音色に大きく影響を与える。注意深く弾いてみればわかると思うが、ある音を出して指を上げてしまった後一気にペダルを上げると、音は突然途切れるが、ペダルをゆっくり上げてくれば、音はきれいにディミヌエンドしたようになるだろう。そして「自然にディミヌエンドしたような形で次の音につなげたほうがいいのか、非常にはっきりと切ったような形で次の音につなげたほうがいいのか」によって、言い換えれば、「次の音の発音の瞬間に前の音が残っているか残っていないか」によって、次の音の音色が大きく変化することになる。



「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 5 ペダルの秘訣」


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