横山幸雄ピアノQ&A136 から  Q54 和音をきれいに弾く方法は?

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Q54. 和音がきれいに弾けません。音が同時に押さえられずバラバラになったり、音のバランスが悪いと言われます。



 和音のバランスが取れない理由としてまず第一に挙げられるのは、小さな手をいっぱいいっぱい広げて、広げることに力を使いすぎてしまって、打鍵するほうの意識がおろそかになるという場合であろう。

 和音に限らず手の形について考えるときに、ピアノ奏法上、支えになっているのは、人差し指と小指である。人差し指と小指が第一関節できちんと支えられていれば、必然的に中指と薬指は形のいいところに収まるわけで、さらにそのときに親指がどのくらい自由に使えるかということが基本の考え方にある。これはショパンも残している言葉で、そのことを的確に表した練習曲が、ショパンの作品25-5だろう。

 さて、和音の話に戻ったときに、手の形が崩れていたりすれば、当然きれいな音のバランスで和音を弾くことはできない。一流のピアニストは、たとえ片手で五つの音を弾かなければいけないような場合でも、すべての音がコントロールできている。実際に曲中で使うときには無意識 かもしれないが、それも普段から十分に訓練された指を持っているから可能なのである。

 きちんと訓練された小指を持っていれば、常に和音の外声を際立たせることができるだろうが、さらに、ほんのわずか手を外側に傾けると、力の重心が小指に移るので、特に小指で強く弾こうとしなくてもメロディの音は出せるはずである。小指側に重心がくれば、 234 の指は比較的力のかからない状態になる。その上で、自由がきく親指をどのくらいコントロールするかということを念頭に置けば、大体の和音はコントロールできるはずだ。和音の中の内声を特に際立たせたい場合も、今の基本に則った上でそれぞれの指にどうやって重心をかけていくかという問題になるだろう。特定の音を強く弾くというより、どのように重みをのせるかということだ。

 また、左手で重要になってくるのは、左手の和音の重心は小指ではなくて親指側にあることが多いという点。確かに小指側にはバスがくるが、低いほうの音というのは比較的自然に音が響くもので、親指側に重心を置いたほうが和音がきれいに響くことが多い。楽譜を注意深く見る学習者であれば、このことに気づくはずだ。なぜならピアノの作品においては、いくら音符が多くても右手で弾けることと左手で弾けることを分けて書いている作品が多いわけで、左手だけで弾いたときには、左の親指の音が左手の音楽の旋律的な役割を持つことがままあるからだ。その点が、左右対称に練習できることばかりではないピアノの奏法の一例である。また、右手の親指に重心を持った和音を弾かなければいけないケースは、かなりまれなケースと言えるだろう。

 和音がバラバラになったりするのは、指でコントロールしようとしすぎているせいである可能性もあり、重心のかけ方で音をコントロールし て、あとは重力や腕の直みで鍵盤を押さえれば、鍵盤は基本的に同時に下がりやすくなるはずである。指そのものだけでなく、手の角度と重心の取り方で和音を弾くやり方を覚えてみたらいいだろう。もっとも、独立した指の訓錬がされていることが前提であるが・・・。



「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 4 テクニック」


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