横山幸雄ピアノQ&A136 から  Q53 トリルを速くきれいに弾く方法

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Q53. モーツァルトのソナタを始めましたが、いつもトリルがうまくいかず、途中でつっかえてしまったり、そこだけテンポが遅くなってしまいます。



 トリルは特に初心者にとって難しいピアノの技術の一つで、苦労する人が多いと思う。トリルの技術を少しわかりやすく分析してみると、要するに、隣り合う鍵盤同士の連打ということになる。初心者でトリルがうまくいかない場合によく見られる現象は、鍵盤が上まで上がりきらないうちに次の音を打鍵しようとして、音が鳴らなくなってしまう場合だ。かなり進んだビアノの学習者でも、極めて速いトリルと非常にゆっくりしたトリルの間の、多くの曲で使われるような適度な速さのトリルを連統してきれいに弾くことは難しいはずである。

 初歩的な練習方法としては、まず長いトリルも短いトリルの繰り返しと考える。例えば「ドレドレドレドレ・・・」というトリルの場合、「ドレド」や「ドレドレ」など三つ四つぐらいの音の短い単位から練習していって、それが慣れてきたら、だんだん一つずつ音を加えていくような形で長いトリルにしていく。トリルはいろいろな場面に出てくるので、あらゆる音量と速さに対応できるように、ある時期徹底して練習してみるといいだろう。

 先に述べたように、鍵盤が上がってこないうちに次の打鍵をしてしまって、結果として音が鳴らなくなってしまうような場合は、速く弾こうとする意識が強すぎることが原因として挙げられる。まずは速く弾くことよりも、一度打った鍵盤をきちんと上に戻すこと、要するに、打鍵して鍵盤を下げることよりも、打鍵した鍵盤を上げることを意識したらいいだろう。鍵盤が上がっていれば、次の音は自然に出るはずである。その辺のタイミングがうまく取れるようになれば、滑らかなトリルになるはずだ。

 また、トリルにはさまざまな指使いが考えられるが、原則的に白鍵二つで弾くトリルは、「2323」という指使いはしない。それは一見弾きやすく思えるかもしれないが、実はいろいろな音色のコントロールが非常に難しい。むろんプロのピアニストでも、楽器のコンディションなどによって、他の指ではどうしても強くなりすぎたりしてしまうときには例外的に使うこともあるが、通常、白鍵の場合は「13」もしくは「1323」が多い。 この「13231323」というように交互に指を変えるほうが弾きやすい場合というのは、例えば左手で何かほかの伴奏をしながら、右手で長いトリルを奏するような場合だ。「1313」「2424」というような同じ二つの指の連続したトリルよりも弾きやすいことも多い。これ も一つマスターしておくと、いろいろな場面に使えるだろう。ちなみにバッハの作品に代表されるように、片手の中でトリルを弾きながら他の声部を弾くような場合、「35」「12」という一見弾きづらい指使いで弾かなければいけないときもある。

 校訂者の付けた楽譜に書いてある指使いだけでなくいろいろ試してみると、初めはやりにくくても、最終的にはきれいに弾けることもあるから、指使いも工夫してみたらよい。



「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 4 テクニック」


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