横山幸雄ピアノQ&A136 から  Q52 スタッカート奏法

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Q52. レッスンでよく「スタッカートが重い」と言われます。自分では短く切っているつもりですが・・・。



 スタッカート staccato の場合も楽典には「音価の半分で奏する」「軽く演奏する」などと書いてあるが、実際には、もっといろいろな種類のスタッカートが存在する。非常に鋭いスタッカートもあればやわらかいスタッカートもあるし、重たいアクセントやマルカートに近いスタッカートもあれば、鍵盤に触れるか触れないか、音が出るか出ないかというくらいの軽さを要求されるスタッカートもある。

 スタッカートで奏するときに重くなってしまうとすれば、きっと体のどこかに余分な力が入っているのだろう。「余分な力が入っている」ということは、裏を返せば「必要な部分の力が弱い」ということである。その辺は自分で自分の弱点を感じとるしかないわけだが、まず念頭に置いてほしいのは、スタッカートに限らず音楽表現上使われるすべての音は、その音が発音された瞬間の立ち上がりに始まり、その音が鍵盤もしくはペダルを押さえている間はのび続け、そして鍵盤やペダルを離すときに音が切れること。これら三つの要素から成り立っているわけだが、大事なのは最初の音の立ち上がりと終わりの切れるときである。なぜなら、一度出してしまった音は、ピアノという楽器の構造上ペダルでのわずかな変化を除けば、後からの音色や音量のコントロールは不可能なのである。そして切るときが大事なのは、そこの弾き方で次の音の準備ができるかどうかという技術的なことに、またそれ以上に次の音にどうかぶさるのかで、次の音が発音する瞬間における音の出方に大きく関わってくるからである。

 「音を出すこと」と「音を切ること」。これがとても短い時間の中でおこなわれるものがいわゆるスタッカートだが、音を出した瞬間に一連の動作の中で奏されなければいけない。もちろん「音を出すこと」と「音を切ること」とは別の動作をするわけではない。もし打鍵するときに余分な力が入っていれば、「力を入れる」「力を抜く」という二つの作業になってしまうことになりかねない。音を出すときには、音の出る一瞬のみに必要な力を使って、あとは脱力する。そうすれば必然的に一連の動作としてのスタッカートも楽になる。

 したがって、単に音の長さやタッチばかりではなくて、「余分な力」が入っていないかどうか、また、「必要な力」がきちんと入っているかどうかを今一度確認したらどうだろう。



「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 4 テクニック」

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