横山幸雄ピアノQ&A136 から  Q43 手が小さくて困っています

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Q43. 私は手が小さく、オクターヴがやっと届くくらいなので、弾ける曲も限られてしまいます。お風呂で指を広げたりしていますが、あまり効果がありません。何か対策はないでしょうか。



 ピアノという楽器は、現在鍵盤の幅がほぼ決まっている以上(厳密にはメーカーによってわずか な違いがある)、弾き手の手の大きさが演奏に影響を及ばさないとは言えないだろう。僕の考えでは、手を最大広げたときに九度(1オクターヴ+鍵盤一つ分)がぎりぎりでも届けば、ほとんどの作品を弾くことができるのではと思っている。ぎりぎりでも九度が届けば、オクターヴはそれよりは楽につかめるわけで、それで弾きこなせない作品はほぼないという理屈だ。

 では「ぎりぎりオクターヴしか届かない小さな手では無理なのか」と 言われれば、必ずしもそうとも思わない。ただ、通常一般的に弾かれている演奏と比べれば、間の取り方が違ってくるなどということはあるかもしれない。

 本来ピアニストが作曲家の書いたものをなるべく忠実に再現することを理想とすれば、 その作曲家と同じような手の形を持っていることが最良ということになってしまう。ピアノがとてつもなくうまかったであろうショパンやリスト、ラフマニノフの場合などは特にそうである 。しかし、いつも作曲者がその曲の最上演奏家なのかと問われれば、必ずしもそうとも言えないのではと思う。そこにまず矛盾が生まれるのだ。

 元来、偉大な作品ほど解釈の幅も広い。それに演奏とは手の形や大きさだけでなく、楽器やホールの聴衆やその日の気分や体調など、さまざまな要素によって自在に変化する。乱暴な言い方をすれば、手が小さいことも大きいことも指が回らないと思っていることも、みんなその人の個性であり、それは他人に真似できることではない。

 それでも一般的な日本人よりは手も体も大きいであろう欧米人が作り上げたピアノという楽器を、小さな手と体で弾きこなすことはそう楽なことではないだろう。でもそれはプロフェッショナルなレヴェルではじめて問題になることであって、楽しむために弾くということにおいては、あまり関係がないことだと思う。それさえも良い教師と勘のよさと、それなりの努力がありさえすれば、ある程度克服できるだろう。



「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 4 テクニック」

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