
Q41. 今ベートーヴェンの《悲愴》ソナタ第1楽章を練習していますが、左手のオクターヴのトレモロを弾いていると途中で腕がつって痛くなってきます。
人間の指が本来ピアノを弾くために出来ているのではない以上、慣れない筋肉をたくさん使えば、硬直して痛くなったりすることもある。特にオクターヴやトレモロなどの奏法で使う筋肉の動きは、たぶん日常生活ではほとんど使うことのないものであろう。そうしたパッセージに直面しても困らないように、ハノンやピシュナなどの純粋に技術のための練習課題を普段からこなしていくことが有効になるわけだ。
これらの奏法の練習方法として重要なことは、まず、なるべく余分なところに力が入らないようにゆっくりとしたテンポから始めること。音量に関しても、小さすぎず大きすぎずという一番手にとって負担のないところから始めて、それから「より弱く」「より強く」という順で技術の可能性を広げていくと、負担が少なくかついろいろな表現ができると思う。
どこか痛くなったら、もしくは痛くなりそうだったら、厳密に「どこが痛いのか」を見つけ、「どこが弱いからなのか」を見極めること。つまり具体的に「どこの関節や筋肉が弱いことによって起きる痛みなのか」をつきとめること。自分の体から出ている信号に対して、敏感になることが必要だろう。
「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 4 テクニック」
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