横山幸雄ピアノQ&A136 から  Q35 練習のために鍵盤を重くすることは?

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Q35. 指や手の筋肉を強くするために、鑽盤のアクションを重くする人がいると聞き ます が、よいことなのでしょうか。



 本来、理想の練習環境というのは、最上質のピアノで理想的な技術と演奏表現を迫求することだと思う。ただ、入念に調整されたコンサートグランドで練習できる人はほとんどいないだろうから、実際にはコンサートで演奏するピアノとは形もコンディションも違う楽器で練習することが多いだろう。指や手の技術のためには、アクションを重くするより、弱点を集中的にトレーニングするための別の方法を選んだほうがよい 。

 例えば鍵盤上ではなく音を出さずにできる器具を使った非常に機械的なトレーニングもあるし、実際それを研究して本などを出している教育者もいらっしゃるから、それらを研究してみるのも悪いことではないだろう。ただ、結局はそれらで培った筋肉や独立した指、力強い関節をどう使うかが問題で、人によっては、横械的に訓練されたクセのようなものを演奏から感じてしまうこともある。つまり、自分の音楽に対する欲求がいつもちゃんと先行していれば問題ないが、単に指を速く動かしたりということのみが先走ってしまうのは危険ということだ。

 また時折いつどんなひどいピアノに出会うかわからないから、自分の家のピアノをわざわざ悪い状態にしている人がいるという話を聞いたことがあるが、僕はまるでナンセンスだと思う。状態の悪い楽器というのは確かに各地にあるけれど、その方向性はまちまちで、それに合わせて練習するより、理想の状態を自身の体によくたたきこんでおいた上でいろいろな楽器に対応するほうが、よほど現実的だ。もちろんそのときにはピアノという楽器のメカニズムも知らなければならないことは言うまでもないのだけれど。



「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 3 ピアノ練習法」

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