横山幸雄ピアノQ&A136 から  Q32 リズム練習って必要?

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Q32. よく先生に音階やアルペジオなどの難しいパッセージは、付点などのリズム練習をするように言われますが、退屈で仕方がありません。



 あるパッセージがうまく弾けないと、ゆっくり練習したり、リズム練習をしたりするように教えられることがあるだろう。「ゆっくり弾く」というのは、一つひとつの指の動きをチェックする上でも大事なことだし、とても意味のあることだと思う。それぞれのパッセージを拡大表現することによってニュアンスの確認ができるし、普通のテンポではおろそかになりやすい部分もていねいに練習したりできるわけだ。もちろん 「弾けないからゆっくりする」というのとは違うけれど、所詮ゆっくり弾けなければ速くも弾けるわけはないので、いずれにしてもゆっくり弾くことによって自分自身を認識しやすくなるだろう。

 リズム練習というのは、リズムをつけることによって、一つの音を長くのばしてゆっくり確認しながら、次の音を鳴らすための準備を十分にし、その次の音のいくつかはすばやく演奏して・・・という繰り返しだ。要するに緩急をつけることによって、速いパッセージを細かく分割して立ち止まりつつ、考えつつ、確認しながら指の練習していくということだ。

 例えば付点のリズム練習では、付点音符のところで次の短い音符とその次の付点音符の二つをよりすばやく弾けるように頭の中で整理して、次の付点音符でその前の二つがきちんと弾けたかどうかを確認することができる。また、モーツァルトの音楽によく出てくるような切れ目のない十六分音符のパッセージは、四つずつアクセントをつけてリズム練習することによって、拍の感覚をしっかり指に覚え込ませるという意味もあるだろう。

 本来ならば、リズム練習のような非音楽的な練習は耳にとって感覚にとってあまり良いものではない。実際僕自身はほとんどやらない。そこで出される音が美しくなく苦痛だから。机の上ででも音を出さずにやればよいのではないかとさえ思う。ゆっくり練習することだって、ちゃんと音楽の流れを感じ、あくまで音楽的な表現に努めなければ退屈なだけだ。

 いずれにしても、何のためかわからず漫然と練習するのは、音楽を歪めてしまうだけで、 意味がないどころかかえって逆効果だ。




「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 3 ピアノ練習法」

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