横山幸雄ピアノQ&A136 から  Q30 ピアノを弾きたいのに弾けない時は?

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Q30. 私はある病気で入院中です。ずっとピアノが大好きで習ってきて、今もピアノを弾きたくてたまりません。あと3ヶ月はピアノに触ることができません。ピアノが近くにないときによく「イメージトレーニング」をすると聞きますが、どのような点に気をつければよいのでしょうか。



 いかなる理由があったとしても長期にわたってビアノから離れなければならないのは、ピアノが大好きでやってきた人にとっては辛いことだ。ピアノがないところでどのようにして技術を維持し、さらに頭の中でイメージトレーニングするかーこれはなにも病気で弾けないときに限らず、別の仕事をしながらピアノの勉強を続けている人や、僕たちピアニストでも忙しい時期には同じ課題に直面する。

 まず技術的なことから言えば、よく「1日でも弾かなければ下手になってしまうのだろうか」などと聞かれるけれど、僕は必ずしもそうは思わない。ただ、まだ若い学生の場合、弾かないことでさらなる進歩は難しいとは思うけれど。僕の場合、夏のバカンスなど年に1、2回は1週間くらいピアノから離れるが、それも3〜4日あれば元に戻る。もっとも病気で動くこともできなければ、筋力全体が衰えてしまうだろうし、許される範囲で必要な部分をなるべく使うように動かすようにしておくしかないだろう。

 技術以外のことでピアノがなくてもできることに、例えば CDやFMなどでいろいろな音楽を聴くことが挙げられる。むしろ普段の忙しい毎日の生活の中では、わざわざ時間をとってCDやFMを聴くのはかえって難しいかもしれない。入院中などどうしてもピアノが弾けないときこそ、ピアノ曲に限らず室内楽やオーケストラ、声楽、古楽や現代音楽など幅広く知ることができる絶好の機会とも言えるかもしれない。多様な作品を知ることによるメリットは計り知れない。

 また、基本的な勉強がきちんとできている人ならば、楽譜を見ているだけで譜読みをすることもできるだろう。知らない作品を楽譜のみから読みとり、頭の中で構成していくことはとても良い勉強にもなる。そのときに、音のみではなく音楽としてフレーズやニュアンス、リズム、ハーモニーなども頭の中で想像できれば文字通りイメージトレーニングになって、その後実際にピアノに向かったときにも相当役立つだろう。

 何はともあれ、こういうことはあせってもしょうがない。早く良くなってまたいい音楽を奏でてください。



「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 3 ピアノ練習法」

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