横山幸雄ピアノQ&A136 から  Q29 少ない時間での効果的な練習法

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Q29. 音大を卒業しましたが、一般企業に勤め始めました。夜や週末練習していますが、どんどんテクニックが落ちています。



 ピアノを弾くのにいくら技術的な勉強が必要だとはいえ、大前提にあるのは、音楽を感じ、感動する心である。それをもとにプロのピアニストは絶え間なく上達すべく研究を重ねているわけだが、ピアノを楽しんで弾きたいという人が、プロの音楽家のように日常生活の中で多くの時間をピアノや音楽に割くことができないのは当然である。その中でどうしたら効果的なのかということは、多くの人にとって非常に興味のある ことだろう。

 簡単なことから言えば、ピアノを弾いている以外の時間に、どれだけ音楽のことを考えたりする余裕があるかということだ。例えばプロのピアニストが1日に6時間ピアノを綽習したとしても、まあこれは僕にとって理想的な練習時間でもあるのだが、残りの18時間はピアノを弾かな いわけである。その18時間をどう使うかということが、たぶん結果を出すために大きく関わってくる部分となるのだ。技術的なこと一つとっても、例えば電車に乗ったり、お風呂に入ったり、ちょっとした余裕のあるときに、指もしくはピアノを弾くときに使う筋肉を少し意識して動かしてあげるのと、まったくそうでないのとでは大きく違ってくるはずである。

 ピアノの練習はなにもピアノに向かわなければできないというわけではない。音楽は頭の中で構築することができるし、技術的な勉強の「指が独立しているかどうか」ということだって、「筋肉がどのくらい発達しているか」とか「どれだけ的確に脳から命令がいくか」とか、そうい う一つひとつの具体的な部分に置き換えることができる。そういったことをなるべく日常生活において意識し、ほんの少し指を動かすだけでも技術の維持につながると思う。また、ピアノを弾いていない時間にCDを聴いたり、それを頭の中で繰り返しイメージすることによって、音楽的な教養も高められるであろう。

 いずれにせよ、最終的には自分で一番弾きやすいように弾けばいいわけだが、それを見つけるためにも理想的な形がどういうものなのかということを、一度先生に習ったり、本を読んだりすることによって、もしくはプロの演奏家をじっくり研究することによって知っておくことは悪いことだとは思わない。余分な力が入っていたりすれば、技術的な練習を繰り返してもあまり効果が上がらないし、それ以上に腱鞘炎になったりする危険もはらんでくる。

 その上で技術的なことから言えば、わかっている人にとっては当然すぎることかもしれないが、 ウォーミングアップしてから始めること。難しいパッセージはゆっくりから徐々に速くしていって、心地よい疲労がある段階でいったん小休止しつつ、つまり短いインターバルをはさんでまた繰り返すという、スポーツなどとも共通する方法を採り入れること。それから、週末などにまとめて練習しようという場合にはどうしてもオーバーワーク気味になりやすいので気をつけたほうがよい。


「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 3 ピアノ練習法」

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