横山幸雄ピアノQ&A136 から  Q26 コンクールの心得

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Q26. 今度初めてコンクールを受けようと思っています。今まで先生に勧められても、こわくて受けようと思いませんでした。そこで、ぜひコンクールを受けるときの心得を教えてほしいのです。



 現在、世界各地でいろいろなコンクールが存在するが、ここ日本でも毎日どこかで開催されているのではないかと思われるくらい、最近になってますます増えてきている。

 ところで、コンクールを受けるということには、二つの目的がある。一つはピアノを勉強している人が力を試すためであり、もう一方はプロのビアニストとしての仕頂を得ていくため。大まかにいって、20歳前から20歳代の人を対象にしたコンクールはプロを輩出していくものであり、学生のためのコンクールは努力と才能を認めるために賞の授与の意味合いがある。そして音楽が芸術でありスポーツでない以上、現役のプロピアニストたちのためのコンクールは、存在しないであろう。

 スポーツの世界であれば、現役の選手が自分の力の限界を目指してしのぎを削り、そこに競争、試合などが成り立つ。そして体力の限界を感じてピークを過ぎれば、現役を退き、コーチになったり解説者になったりして違った人生を歩みはじめる。

 音楽の世界ではそうではない。現役プロ同士のコンクールは、その昔ベートーヴェンと誰かが競演会をした、といった記録はあるものの普通にはあり得ないことである。それは、音楽とは本来、他人と比べたり、点数をつけることによって勝負を決めるものではないからだ。

 そこで本題に戻って質問にあるように、学生がコンクールを受ける場合、少なくとも、結果を気にしてためらったりする必要はまったくない。所詮音楽とは、先に書いたようなものであるから。しかし、音楽自体にはまじめに向かってほしい。大事なことはこの一点だけである。それ以外に例えば、「失敗したら恥ずかしい」といったようなことを考えたとしても、そんなことを恐れていたら、何事も進歩しない。

 現実には、ミスが少なく、そして大きいところと小さいところのメリハリを極端につけたような「コンクール用の弾き方」といったものが幅を利かしているらしい。また、自分ではうまくいったつもりでも、聴いている人は全然そうは思わない場合だってある。

 いわゆるコンクールの弊害はたくさんあるのだろうが、別の観点から見れば、学生にとっては人前で演奏する重要な経験にもなる。そしてもっと一般的に考えてみれば、コンクールを受けたり、賞をもらうことが少しでも励みになったり、がんばろうという気になれば、その存在価値はあるのであろう。




「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 2 学ぶ・教える」

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