横山幸雄ピアノQ&A136 から  Q23 日本と海外の音楽教育の違い

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Q23. 横山さんは日本の音大を出ていませんが、日本と海外の音楽教育の違いを感じますか? やはり海外で勉強したほうがよいのでしょうか。



 この質問にはいろいろな要素が関係する。まず、かつてベートーヴェンやショパンが生活していた場所で、同じところの空気を吸って感じられるインスピレーションがあるという点で留学することはとても意味があると思う。しかし、必ずしも留学をしても自分の納得のいく先生が見つかるとは限らないし、またその先生が非常に忙しい人だった場合、どのくらいレッスンを受けられるのかもわからない。今の時代は海外も簡単に行ったり来たりできるわけで、夏期講習会やセミナーのような場所で集中的に勉強したり、先生が来日されたときに聴いてもらうという形での勉強も可能であろう。

 学校教育の違いについて言えば、特に大きな違いとして感じるのは、一般的に日本では「先生が教える」という環境であるのに対し、ヨーロッパでは「学生が習う、勉強する」ということだろう。日本では「先生の教えることはありがたく聞け」というニュアンスが非常に強いが、海外では自分から貪欲に勉強しなければ、自動的に先生から降ってくるものなどないという意味だ。

 他の国や他の学校のことを詳しく知っているわけではないけれど、僕自身の経験から言えば、パリのコンセルヴァトワールでは非常に多くの自由が学生たちに与えられており、それを生かすも殺すも、生徒たちの考え方と努力次第だった。日本では与えられたことをとりあえず無難にこなしていれば、卒業させてもらえるはずである。

 しかし、果たして卒業後一生にわたって演奏するとなったときに、与えられたものをただありがたく披露するのと、自分が学びとったものを自分自身の言葉で表現するのとでは、演奏の本質がどちらにより近いといえるであろうか。言わずもがなであろう。



「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 2 学ぶ・教える」

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