横山幸雄ピアノQ&A136 から  Q20 「ピアノの基礎」って何?

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高校3年生の娘が、大学の先生にショパンのエチュードをレッスンしていただいたとき、「あなたは基礎ができていないから、いくら練習しても上手にならないと思う。大学に入ったら基礎からやるから」と言われました。娘の友達のチェロの子も都会の先生から同じことを言われたそうですが、この基礎とは、一般的にいって、地方の先生では身につかないのでしょうか。


 ピアノを弾くための基礎力には、技術的な要素と音楽的な要素が存在する。この二つがしっかりしていれば、あとは感性に従ってそれを応用するだけ。言葉にすると簡単だが、実は難しい。プロのピアニストであっても、この二つがともに非の打ち所のないほど完成されている人なんてそういないだろう。

 まずは技術的な面から。姿勢や手の形などのいわゆる形や、あらゆる場面とそこで要求される音色に対してどういうタッチをするか(つまり理屈っぽく言えば、どこの筋肉をいつ収縮させいつ弛緩させるかというようなこと)やペダルの踏み方などの要素もここに含まれる。
 それに対して、音楽的な基礎力には、ハーモニーの理論やリズムの取り方から、それぞれの作曲家のスタイルなどの要素が含まれるだろう。

 ところで、質問にあるように先生が変わったとき、特に音楽大学を目指して本格的に勉強しようとしたときに、新しい先生から「基礎がなっていない」とはよく言われる言葉であるらしい。先生のほうも新たに生徒が来るたびに面倒くさいのか、具体的な説明をせずに「基礎」の一声で片付けてしまうことが多いようだ。しかし、お金をとって教えている以上、何が足らずどうしたらよいのかなるべくわかりやすく説明する責任があると思う。もっともあえて説明をしないことによって生徒に考えさせるというやり方もあるだろうけれど。

 一人ひとり苦手とするものは違うと思うので、ここですべての事例を挙げて説明することはできなけれど、要するに中学や高校に通い始め、ある程度本当に音楽をやりたいと思ってから基礎をすべてやるのは大変なことである。かといって、もっと小さい頃、例えば幼稚園くらいのときに基礎的なことを面白くないととらえてしまうと、音楽そのものすら楽しく思えなくなってしまう、というパラドックスに陥ってしまう危険性がある。

 このことは基本的に、都会で勉強しようとも、田舎で勉強しようとも、違いはない。大事なことは良い環境と良い先生が存在し、そしてその先生との相性が良いかどうかということであろう。

 いずれにせよ、完璧はあり得ない。心から音楽を愛し、努力していくことにより、少しずつでも確実に進歩する結果が導きだせると思うのだが……。

「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 2 学ぶ・教える」

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