フロイデ! ベートーヴェン交響曲第九番〜歓喜の歌の発音とうたいかた〜 実践編  「百万の人々よ、抱き合え」——だれにでも歌える《第九》 櫻井武雄

HOME > メディア > 楽譜 > ベートーヴェン交響曲第九番「歓喜の歌」 > フロイデ! ベートーヴェン交響曲第九番〜歓喜の歌の発音とうたいかた〜 実践編  「百万の人々よ、抱き合え」——だれにでも歌える《第九》 櫻井武雄
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

合唱指揮者からのワンポイントアドバイス

 

「百万の人々よ、抱き合え」——だれにでも歌える《第九》——     

                 合唱指揮者・大阪芸術大学教授 櫻井武雄

 

 「日本各地で毎年百回の第九? ドイツではとても考えられない、すばらしいことだ」と、ドイツの友人サットマリーの目を白黒させたように、日本はまさに世界に誇る《第九》の国です。これは本当にすばらしいことです。なぜならば、まず第一に、《第九》はベートーヴェンの音楽の総決算であるばかりでなく、人類に残された音楽の宝といえるからです。その生の演奏に接する人が年々増え、また合唱を歌う人々も毎年増えてゆく——。
 さらには、いま世界が核の不安に揺れ動くとき、「百万人の人々よ、抱き合え——」の大合唱が日本中に響きわたる——。なんとすばらしいことでしょう。だがそれだけにまた「今年も12月には《第九》」というだけの安易な取り組みは許されないと思います。それは、自由・平等・友愛を基調とするベートーヴェンの精神が、最も大きく宿ったこの偉大な音楽——、そしてまた「この響きではない。もっとすばらしい歌を——」と、常により良きもの、より高きものを求めつづけたベートーヴェンの精神を、汚すことはできないからです。
 では《第九》の合唱は、限られた人にしか歌えないものなのでしょうか——。いや決してそんなことはありません。だれにでも歌えるはずです。では《第九》は易しいのですか——。いや決して易しくはありません。慣れないドイツ語、高い音、息づかい、覚えること、指揮をみること、などなかなか大変です。
 しかし幸いなことに、合唱部分はそう長くはありません。それに一人ではできないことが、人々と心と声をあわせることによって、練習さえすれば歌える、というのも合唱のだいご味なのです。
 インスタントな娯楽が多い現代に、この名曲への手づくりの挑戦は、あなたにとって必ず新しい生きがいを感じさせることでしょう。
 以下、必ず歌えるようになるための条件、すばらしい《第九》にするための条件をあげてみましょう。

 1)少々無理をしても練習を休まないこと。
 2)「苦しみを乗り越えた喜び」というベートーヴェンの精神を心とすること。
 3)むずかしいところは、他人も同じこと。決して自分ひとりではない、と知ること。
 4)まず自分のパート、そして次第に他のパートを聴いて、合唱を楽しむこと。
 5)ある部分がだいたいつかめたら、間違えることを恐れず、楽譜から目を離し、指揮を見ること。
 6)他のパートが歌っているときも、口の中で発音し、また指揮者の注意を聞くこと。
 7)毎日一度は楽譜を開き、発音を確かめ、歌ってみること——。

前へ【一度きりの《第九》ではなく、息の長い合唱活動を!/郡司 博】

【《第九》公演、札幌の場合/瀬川良弘次へ

オーフロイデ! ベートーヴェン交響曲第九番〜歓喜の歌の発音とうたいかた〜 もくじ

株式会社ショパン 1997年発行 無断転載禁止

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 
KAWAI
YAMAHA WEBSITE