楽器の事典ヴァイオリン 2章 オールド・ヴァイオリンの名器 14 その音色

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その音色

 二コロのヴァイオリンの音色はその形態の美しさに優るとも劣らないといえる。高音部は、繊細で、銀の鈴を振るような音色で、低音部は豊かで重厚でありながら、しかも甘く柔らかい。
 二コロ・アマティは、このモデルの持つ精巧な音色こそ、彼のヴァイオリンの特質であるとの自信を得て、更にどの弦からも平均して良い音が出るまでデザインを洗練した。ウィーンでは、これらのヴァイオリンは後に、「モーツァルト・ヴァイオリン」と呼ばれていたが、古典音楽の演奏に理想的であった点で、これは適切な表現であると思われる。
 H・W・エルンストは、19世紀の輝やかしい音楽の大家でモラビア出身であるが、何年もの間アマティの「豪奢なパターン」で演奏した。ヴァイオリンをその形態の美しさ、その精巧な技術、その音の優雅さ故に愛する人間にとって、このアマティの楽器こそ完璧なヴァイオリンであろう。しかし、最も大きな音で、さらに速いパッセージを演奏したい奏者にとってはこの楽器は適さない。アマティの「豪奢なパターン」は今日、優れたストラディヴァリウスやガルネリ・デル・ジェスほどは高価ではない。しかし、二コロ・アマティの楽器は(彼はヴィオラやチェロやダブルペースも作った)現在なおその価値が上昇し続けている。その理由はこれらが非常に美しいからである。


楽器の事典ヴァイオリン 1995年12月20日発行 無断転載禁止



▶︎▶︎▶︎2章 15 ニコロ・アマティの芸術
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