楽器の事典ヴァイオリン 2章 オールド・ヴァイオリンの名器 53 デル・ジェスの楽器の愛用者たち

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デルージェスの楽器の愛用者たち

 バジーニ、ハイフェッツ、フーベルマン、フンメル、クーベリック、ヴュータン、ヴィオッティおよびヴィエニアフスキなどの名奏者たちに愛用され続けてきた。
 その後も、ヴァイオリン奏者たちは急激にデル・ジェスの楽器を求め始め、そのため需要が供給を上回り、現在では、デル・ジェスの価格は天文学的な数字のものとなり、ストラディヴァリウスのそれを追い抜いている。
 そこで、デル・ジェスはどれくらいのヴァイオリンを作り出したかを学んでみよう。
 彼が、その黄金時代に働いた期間はわずかに14年であった。しかし、彼のヴァイオリンを作るスピードは極めて早く、最も数多く作った1735年には16本であったという記録がある。しかし、実際はさらに多くのものを製作したであろうと思われる。急ぎ過ぎたために、些細な点では欠点が多く見出されるが、その基本的な構造はいずれも完璧であった。
 1740年以降のデルージェスは、死の予感があったためか、さらにその作るスピードを上げている。
 なお、彼の楽器の人気が急上昇して以来、優れたヴァイオリン・メーカーたちは競って偽物を作り始めた。デル・ジェスの楽器を真似ることは、完璧に作られたストラディヴァリウスのイミテーションを製作するよりも、はるかに容易であったのである。これらのフェークド・インストルメット ー偽物の楽器- のメーカーとしては、フランス随一の名器のメーカーであったニコラ・ルポーもいたし、さらに、イタリアでは、テストーレ、ランドルフィおよびストリオーニなどの優れたメーカーもいた。
 これらの名人が作ったコピーは別として、その後、あやしげなデルージェスの偽物が続出し、本物と混り合って、「プリズン・ヨーゼフ」などの作り話が生み出されたとも云われている。
 現存のデル・ジェスのヴァイオリンの数については、ヒル商会が一九三一年に調査したものがある。それによると ー145本が確認され、それ以外に30〜40本のものがあると想像される。ー とある。
 一般に、デルージェスは46年 -これは確認できないー の短かい生涯のなかで、彼のブランドのついた楽器を200〜250本程度作ったであろうと想像されている。
 最初に述べたデルージェスの愛用者たちは、いずれも、既にこの世を去っている。


楽器の事典ヴァイオリン 1995年12月20日発行 無断転載禁止



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