
オールド・ヴァイオリンの記録の作成
残された未亡人のリー・ウーリッツァー社長とその娘のマリアンヌ副社長では、難しいヴァイオリン部門の経営は困難となり、さきに述べた貴重なオールド・ヴァイオリンの名器の膨大な記録はロンドンのチャールス・べアーに譲り、会社を解散せざるを得ない状態に追い込まれた。チャールス・べアーは、約1年間、ランバートと共に仕事をし、サッコーニとも親交があり、後継者としては最適なヴァイオリンのベテランであったのである。
ウーリッツァーのヴァイオリン部門が抱えていた莫大な数の名器は、このようにして世界中に散逸し、当時、その一部はわが国にも流れ込んだ。
なお、現在でもウーリッツァーの証明書のついたオールドーヴァイオリンは多く、その信用度は絶対なものである。そのため、誠に恥しいことであるが、わが国のあるヴァイオリン業者が、東京芸大に楽器を売り込むために、ウーリッツァーの偽の証明書を作って問題を起したことすらある。
楽器の事典ヴァイオリン 1995年12月20日発行 無断転載禁止
▶︎▶︎▶︎第1章 38 ウーリッツァー社のヴァイオリン部門の解散
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