
18世紀の終わりから19世紀の初頭にかけて、ヴァイオリンの世界で最も注目すべき人物はフランスのJ・B・ヴィヨームであった。
J・B・ヴィヨームの功績
彼は巨額の資金と天賦の才能で、極めて多くの下請や弟子を育て上げ、さらに驚くほどの数の優れたヴァイオリンを制作し、当時著名であった音響学者のサヴァールに学び、今から考えると、功罪半ばするような突飛な楽器や弓を発明したり作り出したりし、また奇妙な偽のニスを販売して大もうけをしたなどの数多くの逸話を残しているが、いずれにせよ、当時のヴァイオリン業界を、独占的といえるほどに支配した人物である。しかし、彼が最も得意とすることは、クレモナのオールド・ヴァイオリンの名器に精通していて、タスカンあるいはメシアなどのストラディヴァリの名器のコピーを作り出したことである。
(注)、当時のヴァイオリンの鬼才であったパガニー二の愛器であったガルネリウスの修理を依頼された際に、レプリカを作り出し、パガニーニがどちらが本物であるかを識別できなかったという、信じられないような、話も残されている。この双子のような2本の楽器は、現在、ジェノヴァの博物館に並べて残されていると伝えられる。
楽器の事典ヴァイオリン 1995年12月20日発行 無断転載禁止
▶︎▶︎▶︎第1章 22 自由市場としての発展
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