楽器の事典ヴァイオリン 第1章 ヴァイオリンの誕生とその時代による変遷 30 J・B・ヴィヨーム

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[画像]J.B.ヴィヨーム 1850 ー下倉楽器提供ー

J・B・ヴィヨーム

 ヴィヨームの工房からは、クレモナのアマティの工房と同様に、多くの楽器を作り出すと同時に、偉大な弓のメーカーやヴァイオリンの製作者を輩出した。
 弓のメーカーとしては、下請を含めて、ユーリー、ペカット、フォングローズ、マリーネ、シモン、ヴォアラン、レノーブル、マルタン、ポアルソン、コラ、ウッソン、およびラフルールなどがいた。
 さらに、ヴァイオリン・メーカーとしては、オーディノ、バイリイ、クーツルー、ゲルマインおよびマコーテルなどがいた。
  (注)、当時は楽器の販売ルートが確立しておらず、メーカーは資金的にヴィヨームを頼り、ヴィヨームはその莫大な資本力で各メーカーを支配したのである。
 
 ヴィヨームの名声は、いうまでもなく、彼が数多くの優れた楽器を作り出したことによるものであるが、一方、その当時つまり十九世紀に急激に人気が高まった古いイタリアのヴァイオリンについて極めて精通していたことにもよる。
 彼は、これらのイタリアのオールド・ヴァイオリンの鑑定並びに識別についてエキスパートであっただけでなく、それらの近代的な楽器への改造および修理に関しても並外れた優れた技術を持っていた。
 さらに、資金が豊富であったために、これらの名器の多くを自らの工房にストックすることができ、そのため、彼のもとには当時の数多くのヴァイオリンの名奏者たちが集まって来たのである。

 これらの名奏者に対して、ヴィヨームは自らが作ったオールド・ヴァイオリンのコピーの楽器を弾いてみせたりしたが、当時のヴァイオリンのヴィルトゥオーゾたちの殆どは、イタリアのオールド・ヴァイオリン、特にクレモナの二コロ・アマティおよびその弟子たちの製作した名器を選んだ。
 ヴィヨームの作ったヴァイオリンをコンサートに使用したのはシヴォリーだけであったと伝えられている。
 つまり、フランスは、モダン・ヴァイオリンの開発には貢献したが、ヴァイオリンの品質の点では残念ながら市場を独占することはできなかったのである。
 
 その頃、イタリアではプレッセンダ、ロッカおよびギベルティーニなどの優れたヴァイオリンが作られており、イギリスではロットおよびフェント一家などが素晴らしい楽器を作り出していた。ヴィヨームの楽器は、数こそ多かったが、性能の点では、これらの作品大判を並べるか、あるいは場合によっては、追い抜かれるケースもあったのである。
 しかしながら、その宣伝力と財力においては不動の地位を保ち続けていた。

楽器の事典ヴァイオリン 1995年12月20日発行 無断転載禁止


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