
ヴァイオリンの構造の改良
1770年頃、ヴァイオリンの演奏技術の発達および時代の変化による演奏個所の変化 ー従来、宮廷の比較的小さい部屋やサロンから広い演奏会場などに移ったことなどー により、ヴァイオリンの製作上の新しいテクノロジーを導入することがパリで行なわれ始めた。16世紀に初めてヴァイオリンが出現した際の、ヴァイオリンという楽器の持つ広い音楽表現の可能性は、当時の演奏技術や作曲法では到底発揮できるものではなかった。
当初のヴァイオリンは、ダンス・ミュージックとして使うかあるいは歌のメロディーについて弾くという2種類の使い途しかなかったと伝えられている。
(注)、ヴィオールの音楽は紳士淑女の楽しむもの。ヴァイオリンは庶民が楽しむものという記録さえ残っている。
ところが、当時は見下げられていたこの楽器は潜在的に偉大な表現能力を持っていて、これを作曲や演奏法で引き出すには殆ど200年もの歳月を必要としたのである。
しかし、18世紀の半ばには、作曲家や演奏家たちは、ヴァイオリンが持つ素晴らしい能力をすべて引き出し、この楽器を「楽器の女王」の位にまで引き上げたのである。その能力の限界とは、現在一般にバロックーヴァイオリンとよばれるもので、18世紀の最後の10年以上前に作られた古い形態の楽器のオリジナルなものを指す。
楽器の事典ヴァイオリン 1995年12月20日発行 無断転載禁止
▶︎▶︎▶︎第1章 20 バロック・ヴァイオリン
▷▷▷楽器の事典ヴァイオリン 目次