楽器の事典ヴァイオリン 第1章 ヴァイオリンの誕生とその時代による変遷 20 バロック・ヴァイオリン

HOME > メディア > 楽器の事典ヴァイオリン > 楽器の事典ヴァイオリン 第1章 ヴァイオリンの誕生とその時代による変遷 20 バロック・ヴァイオリン
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
[画像]ベルギーのヴァイオリン 18世紀

バロック・ヴァイオリン

 当時の、一般に使われていた楽器、つまりバロックーヴァイオリンは、その胴の膨み具合などには関係なく、現在の楽器と比較した場合、次のようなさまざまな形態および機能の相違があった。
 
 ① ネックが短かく、胴に取り付ける角度がなく、側板の上端と平行に取りつけられていた。
  (注)、現在の楽器では、指板が1本の弦で2オクターブのハイ・ポジションまで演奏できるように、長くなっている。なお、ネックは側板の上端に対してやや下方に傾くようにつけられている。
 ② 指板の厚さが平行でなく、ナットの側か薄くなっていた。
 ③ 駒が低く、弦はガットで作られていて張力が弱かった。
 ④ ピッチも、現在の標準ピッチより半音程度低かった。
 ⑤ バス・バーも短かく、厚さが薄く、サウンド・ポストは細くて直
 ⑥ 弓は短かくて軽く作られており、スティックの反りも反対側であっ
 ⑦ 楽器を支えるには左手を使った。(あご当てはなく、現在のあご当ての逆の側をあごと肩ではさんだ)
 
 このような構造であったため、音色は甘美なものであったが、音量が極めて小さく、指板が短かいので音域が狭かった。
 
 当時のモーツァルト、ハイドンおよび若いベートーヴェンなどの大家は、この古い型式のバロックーヴァイオリンで、その性能を越えるほどのテクニックを生み出し、バロック・ヴァイオリンの限定された機能に30年間も苦悩し続けたのである。


楽器の事典ヴァイオリン 1995年12月20日発行 無断転載禁止


▶︎▶︎▶︎第1章 21 モダン・ヴァイオリンの出現
▷▷▷楽器の事典ヴァイオリン 目次
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 
KAWAI
YAMAHA WEBSITE