楽器の事典ヴァイオリン 第1章 ヴァイオリンの誕生とその時代による変遷 11 ヤコブ・スタイナー

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ヤコブ・スタイナー

 しかし、一人だけ、しかもイタリア人でなく、アマティのヴァイオリンに優るとも劣らぬ楽器を作った天才がいた。それはヤコブ・スタイナ(1617〜1682)である。
 
 ヤコブ・スタイナーは、アマティとは逆に、天賦の才能にめぐまれながら、全く幸運に見離され、生涯貧乏と借金に追われ続けた孤独なヴァイオリン・メーカーであった。
 チロル地方のアブサムという寒村で楽器を作り続けたのであるが、彼の若い頃の経歴は殆ど記録に残されていない。
 そのためどのようにしてヴァイオリンの製作技術を学んだかは判然としない。その頃、インスブルックには宮廷オーケストラがあり、アンドレア・アマティの楽器があったはずであるから、これをコピーしたとも考えられる。
 なお、彼のヴァイオリンの性格はアマティのものに酷似しているので、若い頃、アマティの工房で慟いていたとも思われる。
 しかし、彼のヴァイオリンはアマティのコピーではなく、独自の性格をもったもので、胴の膨みが極めて高く、極めて正確な技法で作られ、ニスも素晴らしいものであった。
 彼のヴァイオリンは、バッハもモーツァルトも弾いたと伝えられているが、驚くほどの評価を得て、彼の死後一世紀以上もの間、ヴァイオリン奏者の理想の楽器として考えられていた。
 その当時のヴァイオリンの優れた奏者はほとんどスタイナーの楽器を持ち、そのコピーは、フランス、イギリス、オランダ、ベルギー、ドイツ語圏の国々さらにイタリアでさえ数多く作り出された。


楽器の事典ヴァイオリン 1995年12月20日発行 無断転載禁止


▶︎▶︎▶︎第1章 12 その当時のヴァイオリンのモデル標準
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