楽器の事典ヴァイオリン 第1章 ヴァイオリンの誕生とその時代による変遷 7 初期のヴァイオリンの2種類の形態

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[画像]カスパー・ティーフェンブルッカーのヴァイオリン
16世紀半ば
ミラノ・スフォルツァ城博物館


初期のヴァイオリンの2種類の形態

 ヴァイオリンの発達の歴史の上で、初期の楽器には2種類の形態が異るものがあった。
 いうまでもなく、北イタリアのクレモナとブレッシアの楽器で、双方共に、次に述べるような完全な構造と性能を持ったものであった。
 
 ①クレモナのアマティのヴァイオリン
 ―美しいニスが塗られたもので、製作技術は極めて巧妙で、形態としては表板と裏板の盛り上ったいわゆる胴の膨んだ楽器で、その音 色は軟らかいフルートの音に似ていて、言葉で表現すれば、「いぶし銀のような」、「純粋な」あるいは「甘い」と表現できるものであ った。
 ②ブレッシアのガスパロ・ダーサロおよびマジーニのヴァイオリン
 ーニスは暗い色で優雅さがなく、その形は大きくてややフラットなもので、頑丈に作ってあり、音色は輝やかしくて鋭く、アマティの楽器の音と較べて、音量があって、音色はアルトに近いものであった。
 
 16世紀では、ヴァイオリン奏者はこの2種類の音色の楽器の双方を、音楽に合わせて、使い分けたと伝えられる。
 (注)、ガスパローダーサロ(1542~1609) 彼の本当の名前はガスパロ・ぺルトロッティである。北イタリアのガルダ湖の南端にあるサロという村で生まれたので、通常ガスパロ・ダ・サロとよばれている。
 
 生まれた時の年号は確実でなく、1540年であったという説もあり、 教会主であった叔父に音楽を学び、1562年にブレッシアに住みついた楽器メーカーである。
 彼の作ったヴァイオリンとヴィオラは極めて少数残されているだけで、多くのものは偽物である。
 彼は当時のアンドレア・アマティの楽器を知っていながら、これをコピーせず、彼の独特な、力強い音色を持つヴァイオリンを作り出した。
 アマティがクレモナにアマティ派を創り出したのと同様に、ガスパロ・ダ・サロもブレッシアで一派を創設し、彼の弟子であるジョヴァンニ・パオロ・マジーニの作ったヴァイオリンは、後の名工であるストラディヴァリやガルネリの楽器に大きい影響を与えた。
 (注)、アンドレア・アマティとガスパロ・ダ・サロのどちらが最初のヴァイオリッを創り出したかは昔からの論争の的であった。しかし、いずれにせよ、双方が、ヴァイオリン製作者の先駆者であり、偉大な技術者であったことだけは断言できる。
 
 しかし、現在から考えてみると、ガスパロ・ダ・サロのほうが、モダン・ヴァイオリッの力強い音の出現を予言的に求めていたことは事実である。
  (注)、この双方の先駆者の作った楽器は、さきに触れた通り、一部は現在のヴァイオリンと構造が異ってはいたが、そのそれぞれの天才的な製作技術により、現在でもオールド・ヴァイオリンの名器として演奏に使用できる。

ガスパロのヴァイオリン.png [画像]ガスパロ、ダ・サロのヴァイオリン
この楽器は、多分、コピーであろう。

カスパーのヴァイオリン.png
[画像]1542-1609


楽器の事典ヴァイオリン 1995年12月20日発行 無断転載禁止


▶︎▶︎▶︎第1章 8 導入
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