横山幸雄ピアノQ&A 136 から Q2 ピアノ演奏の喜びとは?

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音楽大学に通っていますが、毎日の練習が退屈でイヤになるときがあります。特に発表会や試験など人前でうまく弾けなかったりすると、「もうピアノをやめたい」と思ってしまいます。

 

 演奏家としてステージで華やかに見えるピアニストも、実際は年間で百回も演奏会をすることはないわけで、それ以外の日は、黙々と家でひたすら練習をしている。他の楽器と比べても、ひとりでいろいろなことができてしまう楽器であるため、コンチェルトや室内楽のときを除けば、オーケストラ・プレーヤーのように、みんなで集まって力を合わせて練習するということもない。また歌手のように、いつも伴奏者と一緒に音楽をつくり上げるというわけでもない。とても孤独な作業であるわけだ。

 そういう地道な作業も音楽が好きだか

らこそやってこられたのだし、現在もやっているわけだが、それを乗り越えステージに立って多くのお客様と一緒に音楽を共有できるときが、ピアニストにとっては最も素晴らしい瞬間である。もっともステージに立つ直前は緊張でやめたいと思ったりすることも多いので、演奏が終わったときが一番うれしいということになるかもしれない?!

 また良い楽器で良い響きのホールで演奏ができれば、一番理想的なような気もするが、実際にはそれほど響きの良くないところでも、聴衆の雰囲気で非常に気持ちよく演奏ができることもある。つまり、演奏家の成功に大きく関わっているのが聴衆との一体感。これはステージでも実に敏感に感じ取ることができる。

 偉大な素晴らしい作品を通じて、多くの人と感動を共有できたとしても、どんな演奏会でも百パーセント満足ということはなく、だからこそ「次は、さら

に上を目指して」というモチベーションにつながるわけである。もっとも試験などでは、聴く人は楽しんでいるというより演奏をチェックしているのだから、弾くほうとすればあまりうれしいことではないだろう。しかしあまり意識しすぎて、「間違わないように」ということばかりに神経をつかいすぎると、肝心の音楽は余計にぎこちなくなってしまう。「完全に満足できる演奏などあり得ない」というある種の割り切りも、ときには必要だろう。

 いずれにしても、素晴らしい音楽を自らの手によって奏でる喜びを忘れてしまったら、誰にもなにも伝えることはできない。と同時に、演奏会でもCDでも一度素晴らしい音楽体験を経験していれば、多少の苦しい練習も、その先の感動へ向かって乗り越えられるのではないか。あまり自分に厳しい課題を設定しすぎても苦しいだろうから、周りに惑わされず、自分のペースを見つけることも大事だろう。 


 「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 1 ピアノの楽しみ」より

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