オーフロイデ! ベートーヴェン交響曲第九番〜歓喜の歌の発音とうたいかた〜 案内編 《第九》を歌って 大山裕子

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《第九》を歌って

 

東京・台東区民合唱団 大山裕子

 

 昨年、生まれて初めて合唱に挑もうと入団したのが、刀根(とね)団長率いるこの合唱団。そして、いちばん最初にとりくんだのがこの《第九》でした。でもこの作品によって、私は歌う楽しさを知り得たのです。今では私の生活のリズムにすっかり浸透してしまいました。

 集まった団員には、楽譜を読むことさえ初めての方も多く、歌うことより発声練習とパートごとの音とりの練習で必死。暮れの本番までにこれまでにこれで無事完成するのかと思うほど、曲にはならない練習が数週間続きました。しかし、初めて4パートで合唱らしく歌えたときには、本当に感激しました。ハーモニーは必ずしもきれいではなかったかもしれませんが、皆でいっしょに一生懸命歌っているというその気持ちのハーモニーが、お互いにまだ隣の人さえ知らない孤独な状態から、歌を通じてつながりを持てたような喜びでした。生活環境、年齢、性別、すべて違ういろんな人が、今、同じ時に曲を歌っているということ。つまり “だれでもが仲間になれる”と教えているところに《第九》の魅力があると感じました。

 しかし、練習を重ねるうち、《第九》の難しさはいやというほど身にしみました。まずドイツ語の特殊な発音。sch・ö・üなど悩みのタネ。r については逆に楽で、日常会話にまでくせがでてしまいました。ベートーヴェン特有の か の曲想の中に、感情そのものを出すべく cresc. があり、これまた一苦労。そして何といっても高音域の出ないこと…。でも好きなフレーズもできました。初年度に歌ったアルトでは、初めの旋律や後半独唱後のユニゾンで盛り上がるところ。昨年経験したソプラノでは、「抱き合え百万人の人々よ」と雄大に呼びかけるAndante Maestosoの、特にG音と装飾音符の入る Poco Adagio のあたりなどです。3年目の今年はソプラノに再挑戦するつもりですが、歌えば歌うほど難しく、それだけにやりがいもあり、また新たな発見があることでしょう。

 平和を願って生き続けた不遇のベートーヴェンの曲を、平和な時代に生きている私が、恵まれた環境で歌っている。松浦ゆかり先生の愛情あふれるご指導や団長をはじめとする合唱団を支える方たちの熱意。《第九》を歌ったことで、すてきな人たちにめぐりあい、合唱する喜びを知り、平凡でも幸せに過ごしている日々を感謝できる自分になれました。

 《第九》を歌って本当に良かったと思います。《第九》はこれからもずっとつきあっていきたい、私には大切な宝物なのです。

 大山裕子.png

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