カーチャ・カバノヴァ[全3幕]ヤナーチェク作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

チェコオペラ

L. Janáček, Káť'a Kabanová 1919~21

カーチャ・カバノヴァ[全3幕]ヤナーチェク作曲


登場人物❖

ボリス・グリゴレヴィチ(T) マルファ・カバノヴァ(カバニハ)(A) ティホン(T) カーチャ(S) ヴァーニャ・クドリヤーシ(T) ジコイ(B) ヴァルヴァラ(Ms)他

概説

 古い家長制度への批判が原作の主題であるが、ヤナーチェクのオペラはその中の人間関係の心理を、抒情味豊かに描き出している。

 

第一幕

 

 第一場 ヴォルガ河畔のカリノフの町の堤の上の公園。左手にカバノヴァの家。ジコイ家の執事クドリヤーシが感慨深げにヴォルガ河を眺め、女中と語り合っている。そこに主人で裕福な商人ジコイが、甥のボリスを罵りながら出て来て立ち去る。ボリスは問われるままにクドリヤーシに悩みを打ち明ける。それによると、彼の両親が死んだ時に遺産をジコイに託し、ボリスと妹が成長するまでジコイが後見人になっている。ボリスはまた、人妻カーチャ・カバノヴァを愛してしまったと告白する。

 そこにやはり裕福な商家の未亡人マルファ・カヴァノヴァ(愛称カバニハ)が、息子ティホンとその妻カーチャ、養女ヴァルヴァラを連れて家に戻るために通りかかるので、ボリスは物陰に隠れる。カバニハはティホンにカザンの市に行くよう命じ、嫁カーチャのことばかり考えて母親をないがしろにしていると責めて嫁もいびる。カーチャは怒って家に入る。ヴァルヴァラはティホンのふがいなさを非難し、カーチャに同情を寄せる。

 第二場 翌日のカバノヴァの家の中。カーチャはヴァルヴァラに向かっておてんばで楽しかった少女時代のことを話し、実は夫以外に想いを寄せている男がいると打ち明ける。カバニハの目を忍んで恋人クドリヤーシと付き合っているヴァルヴァラは、その男に会ってみればよいのにと言う。

 そこに旅支度をしたティホンが現れるので、カーチャは夫に一緒に連れて行って欲しいと甘えるが、ティホンはただカーチャを慰めるだけである。ティホンはカバニハの命じるままに、古い習慣に従って妻に留守中貞操を守るよう言いつけて出かける。

第二幕

 

 第一場 カバノヴァの家の作業室。カバニハはカーチャに、夫が留守なのにちっとも寂しそうでないと悪態をついて出かける。するとヴァルヴァラは、恋人クドリヤーシと密会するために盗み出しておいた裏木戸の鍵をカーチャに渡す。カーチャはそんなことをするのは身の破滅だと言って鍵を河へ捨てようとするが、カバニハの声がするので慌てて鍵をポケットに隠す。しかし、次第にボリスに会ってみたいと言う気持ちを抑え切れなくなって立ち去る。

 入れ違いにカバニハとジコイが現れる。カバニハに気があるジコイは、酒の酔いも手伝って彼女に言い寄るが、彼女は相手にしない。

 第二場 ヴォルガ河の堤。その夜遅くなって、クドリヤーシがヴァルヴァラを待ちながらギターの弾き語りをしていると、ボリスが現れる。ボリスがカーチャからの伝言でここに来たことをクドリヤーシは言い当てる。やがてヴァルヴァラがやって来て、クドリヤーシと小径を下りて行く。

 待ちこがれるボリスの前にカーチャが現れる。はじめは身の破滅を恐れたカーチャは、ボリスの求愛を受け入れないが、やがて罪の深さを嘆きながらも自制心を失った二人は固く抱き合う。そこにヴァルヴァラが戻って来て、カーチャとボリスに自分たちがいたところに行くよう勧めて、カバニハに見つからないように見張っていると言う。遠くから二人の逢瀬を楽しむ声が聞こえる。頃合いを見計らってヴァルヴァラは二人に声をかけると、ヴァルヴァラとカーチャは裏木戸をくぐって家に入って行く。

 

第三幕

  

 第一場 ヴォルガ河に近い古い朽ちた夏の山荘。前幕から十日後の夕方、散歩中のクドリヤーシは雷雨にあい、廃屋で友人と雨宿りしている。間もなくジコイもやって来て、クドリヤーシと雷について論じる。やがて雨がやんで皆は出て行く。そこにヴァルヴァラが現れ、続いてやって来たボリスに合図すると、ティホンが予定より早く帰って来たためカーチャが取り乱していると知らせ、すべてを夫に告白しかねないと告げる。そこにカーチャが駆け込んで来てもう死にたいと言い、ヴァルヴァラに力づけられるが、彼女の狂乱状態は直らない。そこに現れたカバニハとティホンに、夫の留守中十日も毎日ボリスと密会していたと告白し、気を失って夫の腕の中に倒れる。彼女は急に意識を取り戻すと、再び荒れ出した嵐の中を走り去る。

 第二場 夕暮れのヴォルガ河畔。それから数日後の夕暮れ時、カバニハは不義を働いた妻を生き埋めにするようティホンに言う。ティホンは自分にはできないと言いながら、カーチャを探している。入れ違いにヴァルヴァラとクドリヤーシが現れ、クドリヤーシの母がいるモスクワで新しい生活を始める相談をして去る。遠くでカーチャを探す声が聞こえる中にカーチャが現れ、たとえ死ぬことになってもその前にもう一度ボリスに会いたいとつぶやき、もう一度彼と暮らせたらと夢見る。そこにボリスが現れ、罰としてシベリア行きをジコイに命じられたと言う。カーチャは一緒に連れて行って欲しいとせがむが、ボリスはあなたは人妻で自由の身ではないと言ってその願いを断って去る。カーチャは十字を切って河に身を投げる。引き上げられた彼女の死体を前に、カバニハはご迷惑をかけましたと集まった人々に謝る。

Reference Materials



初演
1921
1123日 ブルノ国民劇場

原作
アレクサンドル・オストロフスキー/「あらし」のヴィンツェンツ・チェルヴィンカのドイツ語訳

台本
レオシュ・ヤナーチェク/チェコ語

演奏時間
第1幕38分、第2幕31分、第3幕31分(マッケラス盤CDによる)

参考CD
● ゼーダーシュトレーム、マーロヴァ、クニプロヴァ、ドヴォルスキー、クレイチーク/マッケラス指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(D

● デノーケ、ベツコヴァ、ドゥランボワイエ、キューブラー、ヘンシェル/カンブルラン指揮/チェコ・フィル、スロヴァキア・フィル唱(Orf

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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