利口な女狐の物語[全3幕]ヤナーチェク作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

チェコオペラ

L. Janáček, Příhody Lišky Bystroušky 1922~23

利口な女狐の物語[全3幕]ヤナーチェク作曲


登場人物❖

森番(Br) その妻/ふくろう(A) 校長/蚊(T) 神父/穴熊(B) 行商人ハラシュタ(B) 居酒屋の主人パーセク(T) 女狐ビストロウシュカ(S) 居酒屋の妻パスコーヴァ(S) 雄狐ズラトフシュビーテク(S、Ms) 雄鶏/かけす(S)他

概説

 9曲あるヤナーチェクのオペラの第七作で、お伽噺(とぎばなし)風の物語ながら動物の世界に人間社会をなぞらえた寓話風のオペラである。自然観察に対するヤナーチェクの鋭いまなざしが発揮されている。

第一幕

 

 第一場 黒い乾いた渓谷。真昼の午後の森では、穴熊が穴から頭を突き出して長いパイプで煙草(たばこ)をふかしている。蝶や蜻蛉(とんぼ)がそのまわりを飛び回って去ると、穴熊も穴に入る。森番がやって来て、疲れたと言って石に腰をかけて居眠りをする。すると森の生き物たちが姿を現し、蛙は蚊を捕まえようとする。

 子供の女狐(めぎつね)ビストロウシュカは蛙を狙ってやって来る。蛙はびっくりして飛び跳ね、森番の鼻の上に落ちるので、森番は目を覚ます。そして子狐を難なく捕まえる。子狐は母狐を呼ぶが、森番は子供たちが喜ぶだろうと言って子狐を家に連れて帰る。

 第二場 湖畔にある森番の小屋の前の庭。秋の午後、森番に育てられた女狐ビストロウシュカが寂しくて甘え声で泣いていると、犬のラパークがもうすぐ恋の季節がやって来ると言って女狐に色目を使う。女狐は無関心を装い、ラパークの接近をはねつける。

 そこに森番の息子ペピークとフランティークが来て、女狐を棒で突ついてっk悪戯(いたずら)する。怒った女狐はペピークにかみつくが、駆けつけた森番に縄で縛りつけられる。夜もふけて、女狐は泣きながら寝る。犬のラパークは、自分のように逃げなければ良いのだと人間とつき合う方法を説教する。朝になって、縄でつながれている女狐を鶏が嘲笑(ちょうしょう)するので、女狐は死んだ振りをして鶏たちを油断させて次々に殺してしまう。鶏たちの悲鳴を聞きつけて家から出て来た森番の妻が女狐を棒で叩くので、女狐は縄をかみ切って森へ逃げる。

第二幕

 

 第一場 森の中の穴熊の穴の前。秋の午後、自由の身になって森へ戻った女狐は穴熊の穴をのぞき込んで話しかける。

 穴熊は他人の家をのぞくなと怒るが、女狐は大きな家を持っているくせに文句を言うなと応酬して森の動物たちの同情を集めるので、穴熊はいたたまれずに穴を出て行く。こうして女狐は、大きな家を手に入れるのに成功する。

 第二場 パーセクの居酒屋。蚊のようにやせた校長と森番はトランプに興じ、穴熊そっくりの神父も加わって酒を飲んで雑談に花を咲かせている。彼らは皆以前にテリンカという娘に恋していたらしく、お互いに冷やかし合う。不愉快(ふゆかい)になった校長がまず帰って行き、パーセクに嫌味を言われた神父も帰る。残った森番はパーセクにもう一杯酒を注文するが、逃げた女狐の話をせがまれて気分を害して店を出て行く。

 第三場 月夜の森の小道。酔っ払った校長が帰宅の途中、女狐が向日葵(ひまわり)の花を揺すると、校長はそれをテリンカと思って抱きつく。神父も煙草に火をつけてテリンカの思い出にふけっていると、森番が撃つ銃声に驚く。森番が出て来て、またあの女狐を逃がしてしまったと口走る。

 第四場 女狐ビストロウシュカの穴の前。美しい雄狐ズラトフシュビーテクが穴の前を通りかかり、二匹の狐は互いに惹かれる。雄狐は人間の許で育った女狐が教養が高いのに感心し、プレゼントに兎を持って再び現れ、女狐に求婚する。ついに二匹は抱き合って穴の中に入る。やがて二匹は正式に結婚を発表し、森の動物たちはバレエを踊って二匹の狐を祝福する。


第三幕

   

 第一場 森の茂み。秋の午後、行商人ハラシュタが鶏をいっぱいに入れたかごを担いで森の小道を歩いて来る。森番に出会ったハラシュタは、今度テリンカと結婚すると語る。女狐に殺された兎を見た森番が、女狐を捕らえようと罠(わな)を仕かけた後、女狐は夫と子狐をたくさん連れて現れ、罠に気づいて避ける。

 そこにハラシュタが現れ、女狐を見つけてテリンカへ襟巻きのプレゼントにしようとかごを置いて銃を構える。しかし女狐はびっこの振りをしてあちこち逃げ回って行商人を翻弄(ほんろう)し、とうとう彼を坂道の下に転がしてしまう。その間に子狐たちは鶏を全部食べてしまうので、本気になって怒った行商人は子狐をかばう女狐を撃ち殺す。

 第二場 パーセクの居酒屋の庭。森番が居酒屋の妻に、女狐の穴を見つけたが中は空だったと話している。校長は、今日テリンカが他の男と結婚するとがっかりした様子で居酒屋の妻に話すと、彼女はテリンカが新しい狐の襟巻きをしていたと言う。森番は校長にテリンカのことはもう昔話になったと言い、酒代を払って出て行く。

 第三場 第一幕第一場と同じ黒い乾いた渓谷。それから何年か経ったある日、森番は昔のことを思い出しながら居眠りをしている。夢の中でビストロウシュカそっくりの小さな女狐を見て、彼女の子供かと思う

 それを捕まえようと手を伸ばしたところで目が覚める。手の中に捕まえたのは蛙だった。森番は女狐を捕まえた時も蛙が鼻の上に落ちて来て目が覚めたのを思い出す。すると蛙は、あの時の蛙は僕のお爺さんだと叫ぶ。

Reference Materials



初演
1924
1126日 ブルノ国民劇場

原作
ルドルフ・チェスノフリーデク/「狐のビストロウシュカ」

台本
レオシュ・ヤナーチェク/チェコ語

演奏時間
第1幕25分、第2幕34分、第3幕30分(マッケラス盤CDによる)

参考CD
● ポップ、ランドヴァー、クレイチーク、イェドゥリチカ、ノヴァーク/マッケラス指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(D

● ワトソン、モンタギュー、ナイト、アレン、ハウェル/ラトル指揮/コヴェント・ガーデン王立歌劇場管・唱(EMI

参考DVD
● ベイラクダリアン、ケルシー、クリスティン/小澤征爾指揮/サイトウ・キネン管、
東京オペラ・シンガーズ(NHK

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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