ルサルカ[全3幕]ドヴォルザーク作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

チェコオペラ

A. Dvořák, Rusalka 1900

ルサルカ[全3幕]ドヴォルザーク作曲

登場人物❖

ルサルカ(S) 王子(T) 外国の王女(S) 年老いた水の精(B) 魔法使い(Ms) 森番(Br) 皿洗いの少年(S)他

概説

 ドヴォルザークは、当時の民族楽派の例にならって国民音楽的なオペラを多数作曲した。この曲は11作目に当たる円熟期の作品であり、国際的に知られている彼の唯一のオペラである。美しい抒情的な旋律によって親しまれている。



第一幕

 

 深い森の中の湖のほとり。三人の若い木の精たちが、月の光を浴びながらホウ、ホウと飛び回っている。年老いた水の精が水面から姿を現し、木の精の娘たちを捕まえようとするので娘たちはからかう。それを柳の枝に腰をかけて眺めていたルサルカは、父親でもある年老いた水の精に向かって、最近ここにやって来る人間の王子に恋したことを告白し、自分も人間になりたいと願う。父親はとんでもないことだと警告し、魔法使いのところに行って相談するように勧めて水の中に消える。ルサルカは一人月に向かって王子に対する想いを歌う(月に寄せる歌「白銀の月」)。

 ルサルカは決意を固めて魔法使いの小屋を訪ね、彼女の膝元に崩れて人間になる魔法の薬が欲しいと訴える。魔法使いは、人間の姿になる代わりに口がきけなくなること、また恋人が彼女を裏切ることになれば、その男と一緒に死んで永久に深い水底で苦しまなければならないことを告げる。それでもどうしても人間になりたいというルサルカの切なる願いに、魔法使いはチチンプンカンプンと呪文を唱えながら釜を焚いて、魔法の薬を調合してやる。

 やがて湖に朝靄が訪れると、角笛の音とともに狩人の一行がやって来る。狩人とともに姿を現した王子は、何か不思議な魔力に捉われて狩人たちに先に城に帰るように命じる。

 王子は一人湖のほとりに腰をかけていると、貧しい衣装をまとって人間の姿に変身したルサルカを見つける。彼女は口を開かないが、金髪をなびかせたあまりの美しさに王子は魅了される(「愛らしき見かけぬ幻よ」)。ルサルカは王子の胸の中に抱かれる。遠くから仲間が一人足りないと言う水の精姉妹の声を背にしながら、王子はルサルカを城に連れて行く。


第二幕

 

 王子の城の庭園。森番と皿洗いの少年が、これから始まる王子と森で見つけて来た口のきけない見知らぬ女との結婚について噂話をしている。年季の入った森番は、森の妖精や魔法使いにたぶらかされているのでなければよいがと王子のことを心配する。

 そこに王子が噂のルサルカを連れてやって来るので、森番と皿洗いは姿を消す。王子はルサルカに向かって、城に来てから一週間にもなるのに、なぜ心が燃えないのかと不満を訴える。王子の心は、すでに外国から招待している王女に移りつつある。その様子を回廊から眺めていた王女は二人の前に姿を現し、口のきけないルサルカに辱めの言葉を吐く。王子はルサルカに、一人で自分の部屋へ行って舞踏会のために着替えをするよう冷たく言い、王女と一緒に祝宴のために城の中に入る。華やかなポロネーズが聞こえる。池から現れた年老いた水の精は、その様子に憤慨してルサルカの運命を嘆く(「世界広しといえども」)。そこにルサルカが絶望感で広間から抜け出して来るので、年老いた水の精は彼女を励ますが、自分の運命を知ったルサルカはもう無駄なことだと訴えて父に助けを請う(「無駄よ、無駄なことなのよ」)。

 その時王子と外国の王女も庭に出て来る。王子が王女に愛を告白して二人が抱き合った時、ルサルカは木の陰から飛び出して王子の腕にすがりつくが、驚いた王子は彼女を突きとばす。すると水の精が池の上に現れてルサルカを池に引きずり込むので、立ちすくんだ王子は王女に助力を求めるが、高慢な態度の王女は王子を軽蔑の目で冷たく突き放す。


第三幕

 

 第一幕と同じ深い森の中の湖のほとり。再び故郷の湖に戻って来たルサルカは、柳の枝に腰をかけて湖の呪いを嘆いている(「感情のない水よ」)。ルサルカはここに帰って来たものの、死ぬことも水の精姉妹に会うこともかなわない。絶望感に捉われた彼女は小屋から出てきた魔法使いに問いかけるが、魔法使いはルサルカを苦しみから救うには、彼女を破滅させた王子の血を得る以外に方法はないと言って、胸の間からナイフを取り出して渡す。しかしまだ王子を愛しているルサルカは、驚いてナイフを湖に投げ捨てると、彼を殺すくらいなら自分が苦しみに耐えた方がよいと言う。魔法使いはそれではお前が永遠に苦しむがよいと言って小屋の中に姿を消す。悲嘆に暮れたルサルカは水の中に飛び込み、水中へ沈んでゆく。水の下では水の精たちがもう彼女は戻って来ないと歌う悲しみの声が聞こえてくる。

 西の方が夕焼けに染まる頃、森番と皿洗いの少年がおっかなびっくり魔法使いを訪ねて来る。小屋から出てきた魔法使いに、皿洗いは心配そうに、最近王子が重病になったのは城から消えた不実な妖精の魔法のせいだと話をする。突然水面に水の精が現れて、不実なのは王子の方だと言うので、びっくりした二人は逃げる。木の精たちが集まって、踊ったり歌ったりして消え去る。

 そこに自分の罪を悟った王子が飛び出して来て、絶望的にルサルカを呼び求める(「わたしの白い牝鹿よ!」)。湖の中から静かに現れたルサルカに、王子は赦しを請い口づけを求めるが、彼女はそれが王子の死を意味することを告げる。しかし王子は、今では罪を償うために喜んでルサルカの口づけを受け入れ、二人はそろって湖の中に沈んでいく。

Reference Materials



初演
1901
年3月31日 プラハ国民劇場

台本
ヤロスラフ・クヴァピル/チェコ語

演奏時間
第1幕55分、第2幕46分、第3幕56分(ノイマン盤CDによる)

参考CD
● ベニャチコヴァ、ドロヴコヴァー、ソウクポヴァー、オフマン、ノヴァーク/ノイマン指揮/チェコ・フィル、プラハ・フィル唱(Sup

● フレミング、ウルバノーヴァ、ザージッチ、ヘップナー、ハラウタ/マッケラス指揮/チェコ・フィル、キューン混声唱(D

参考DVD
● フレミング、ディアドコヴァ、ラリン/コンロン指揮/パリ・オペラ座管・唱(DEN

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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