売られた花嫁[全3幕]スメタナ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

チェコオペラ

B. Smetana, Prodaná nevˇeta (Die verkaufte Braut) 1863~66

売られた花嫁[全3幕]スメタナ作曲


登場人物❖

マジェンカ(マリー)(S) イェーニク(ハンス)(T) ヴァーシェク(ヴェンツェル)(T) ケツァール(B) クルシナ(Br) リュドミラ(カティンカ)(S) ミーハ(B) ハータ(アグネス)(Ms)他

概説

 スメタナが完成した八曲のオペラの第二作に当たる。初演後たびたびの改訂を経て1870年に現行版が完成した。初演時から人気を博し、作曲家が生存中の1882年に第100回記念公演が行われた。なお、世界的にはドイツ語訳で上演されることが多く、その場合の登場人物名はカッコ内に記してある。


第一幕

 

 ボヘミアのある農村の広場。今日は教会の聖別式の祭で、村人たちは春の訪れににぎやかに踊ったり歌ったりしている(「花はうるわしく」)。その中で一人マジェンカだけは悲しそうな顔をしている。というのも、彼女にはイェーニクという恋人がいるにもかかわらず、彼女の両親はまだ会ったこともない大地主ミーハの息子の知恵遅れでどもりのヴァーシェクと結婚させようとしているからである。イェーニクはマジェンカを慰めるが、彼女はイェーニクがあまり心配していない様子を気にする(「もしも、あなたのそんなところを知っていたとしたら」)。イェーニクは継母と折り合いが悪く家を出た自分の過去の境遇をマジェンカに語り、二人は互いに慰め合って立ち去る(「母親の祝福のように」)。

 入れ違いにマジェンカの両親クルシナとリュドミラが、結婚仲介人ケツァールとともに現れる。ケツァールは両親にしきりにマジェンカとミーハの息子との縁談を勧める。実はミーハには二人の息子がいるが、長男は長い間行方不明なので次男ヴァーシェクが結婚の相手なのである。ケツァールはヴァーシェクのことを、立派な息子で大金持ちの息子だからと言うので、両親もすっかり彼の口車に乗せられてしまう。両親とケツァールはマジェンカにヴァーシェクとの見合いを勧めるが、彼女は自分にはイェーニクという心に決めた人がいるからと断る。するとケツァールは、昔クルシナが娘をミーハの息子と結婚させると書いた誓約書を取り出してその履行を迫るが、マジェンカはそんなもの自分に関係ないと言って走り去る。

 リュドミラは娘をかばうが、ケツァールは、では自分がイェーニクと話をつけるから、居酒屋で偶然出会ったようにしてマジェンカとヴァーシェクに会わせようと言う。村人たちが楽しげにポルカを踊っている。


第二幕

 

 居酒屋の中。村人とイェーニクたちはビールをたたえ、フリアントを踊って出て行く。そこにマジェンカに会いにヴァーシェクがやって来る。後からやって来たマジェンカはこんな男と結婚すると大変なことになると思い、ヴァーシェクが自分の顔を知らないのを幸いに、マジェンカは悪い女で、結婚してもヴァーシェクを苦しめるだけだと結婚するのをあきらめるように言う。ヴァーシェクはとうとうマジェンカをあきらめ、彼女と会わないと誓ってしまう。

 一方ケツァールはイェーニクに、金持ちで美人の女性を紹介するからマジェンカをあきらめるよう説得し、その代償に百グルテン出そうと申し出る。イェーニクはケツァールの魂胆を見抜いて代償を三百グルテンに吊り上げると、「マジェンカはミーハの息子以外とは結婚しない」という条件でケツァールの申し出を了承する。その上イェーニクは、彼女がミーハの息子と結婚した時には、ミーハがマジェンカの父親クルシナに貸した三百グルテンの返済は要求しないことを認めさせる。ミーハの息子といえばヴァーシェク以外にいないと信じ込んでいるケツァールは、喜んで契約用紙と立会人を用意するために立ち去る。イェーニクは誰がこの秘密を信じてくれるだろうと(「どうやって皆が信じてくれるか」)、一人胸中に秘めている計略がうまく運んでいるとほくそ笑む。ケツァールが作成した契約書にイェーニクはサインする。村人たちは、イェーニクがお金で花嫁を売ったと彼を非難し、クルシナもこんな恥知らずの男に娘を嫁がせなくて良かったと言う。

第三幕

 

 第一幕と同じ農村の広場。ヴァーシェクが現れ、居酒屋で会った見知らぬ女性に思い焦がれている。そこに旅回りのサーカスの一座がやって来る。座長が前口上を述べて道化師が前座の踊りを始めると、これを見ていたヴァーシェクは一座の美女エスメラルダにひと目ぼれする。この時、今夜熊の役をやるはずだった団員が酔い潰れて出演できなくなったと座長に報告が入る。エスメラルダにおだてられて、ヴァーシェクは熊の縫いぐるみを着て代役を務める約束をさせられる。そこにケツァールがヴァーシェクの両親を連れて、ヴァーシェクにマジェンカとの結婚誓約書にサインさせるためにやって来るが、ヴァーシェクはマジェンカと結婚したら殺されてしまうと言って走り去る。

 そこにマジェンカが両親とともにやって来る。ケツァールからイェーニクがお金で自分を売った契約書を見せられたマジェンカは落胆するが、ヴァーシェクとの結婚には承諾しようとしない。そこにヴァーシェクが連れて来られ、居酒屋で会った女がマジェンカとわかると気が変わって、彼女と結婚したいと言い出す。

 マジェンカは一人になると、恋人の裏切りを信じられずに嘆き悲しむ(「ああ、何という悲しみ、何とすてきだったのかしら、この愛の夢」)。彼女は現れたイェーニクに裏切りを責め、彼の言い訳も聞かずに、当てつけにヴァーシェクと結婚してやると言う。

 クルシナ夫妻、ミーハ夫妻、ケツァールや村人たちもそろって、いよいよマジェンカとヴァーシェクとの結婚の話がまとまった時、イェーニクが前に進み出て、ミーハ夫妻に長男が長い旅からただ今帰って来たと告げ、契約書通りミーハの息子がマジェンカと結婚すると言う。ケツァールは一杯食わされたとほぞをかむが、クルシナ夫妻の取りなしでミーハ夫妻も納得する。村人たちが二人を祝福していると、熊の姿をしたヴァーシェクが現れて、皆の嘲笑(ちょうしょう)を買う。

Reference Materials



初演
1866
年5月30日 プラハ国民劇場

台本
カレル・サビナ/チェコ語

演奏時間
第1幕50分、第2幕37分、第3幕51分(ケンペ盤CDによる)

参考CD
● ローレンガー、ワーグナー、ヴンダーリヒ、コルデス、フリック/ケンペ指揮/バンベルク響、RIAS室内唱(EMI

参考DVD
● ポップ、イェルザレム、リッダーブッシュ/A・フィッシャー指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(DG

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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