アマールと夜の訪問者[1幕]メノッティ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

アメリカオペラ

G. C. Menotti, Amahl and the Night Visitors 1951

アマールと夜の訪問者[1幕]メノッティ作曲


登場人物❖

アマール(Boy-S) アマールの母親(S) カスパール王(T) メルヒオール王(Br) バルタザール王(B) 従者(Br

概説

 このオペラはテレビ用のクリスマス・オペラとして作曲を依頼され、初演は一九五一年のクリスマス・イヴに放送された。メノッティらしい優しさと明快さによって広く親しまれ、その後舞台でもしばしば上演されるようになった。

 ベツレヘムの近郊。天空いっぱいに星がきらめく冬空の下に貧しい羊飼いの小屋がある。足が悪く松葉杖をつく少年アマールは、星空を眺めながら羊飼いの笛を吹いている。

 家の中からは母親が早く入るようにと言う声が聞こえるが、彼は生返事をしながら星を見続けている。そこで母親は大声で呼ぶが、アマールは依然として家に入ろうとしない。ようやく松葉杖をつきながら家に入って来たアマールは、窓ほどもある大きな星が見え、流星となって空を横切って行ったと話をするが、母親はそんな息子の話を相手にしない。それよりも何もかも売り払って食べる物さえなくなった生活の不安を嘆き、この子は空腹から頭がおかしくなったのではないかと心配して泣き出す。アマールはそんな母親を慰め、道化師の姿で笛を吹けば通りかかった王様がきっとお金をくれて、おいしい食べ物を買えるようになると言う。

 母子が眠りにつくと遠くから物音が聞え、カスパール、メルヒオール、バルタザールの三人の王様が多くの贈り物を携え、従者を従えて二人の小屋にやって来る(三重唱「遠くからわれわれはやって来た」)。ドアのノックの音に戸を開けたアマールは王様が立っているのに驚き、母親に報告する。母親はアマールにもう一度よく確かめるように言うが、母親も戸口に行くと、三人の王様がいるのにびっくりする。王様の小姓たちが敷物を敷いてその上にたくさんの贈り物を置く。母親はとにかく薪でも貰って来ようとするが、メルヒオール王は、自分たちはまた流星を追わなければならないので一夜だけ泊めてもらえれば十分だと言う。アマールは先ほど見た流星がそれに違いないと思う。母親は王様たちのもてなしの準備に出かける。

 アマールは母親の留守中に王様たちに好奇心から質問すると、バルタザール王もアマールに質問を返す。それに答えてアマールも自分の身の上話をして、もう何もかもなくなったので明日から乞食をしなければならなくなった事情を悲しそうに話す。耳の遠いカスパール王は何度も同じことを繰り返し聞きながら、アマールが興味を持った宝石箱について説明する。

 薪を持って戻ってきた母親は、アマールに近所の羊飼いのところに行って、遠くから来た王様をもてなすための物を集めて来るように命じる。アマールが出て行くと、母親はこのようなすばらしい贈り物を誰に贈るのかと尋ねる。王様たちは、贈るのは貧しく生まれた王様の子供で、東の星がその方の誕生を祝うために導いてくれると説明する。母親はてっきりそれがアマールではないかと誤解して喜ぶが、王様たちはその方は処女である女王から生まれた方だと説明する。

 近所の羊飼いたちが果物や野菜などの食べ物を持って集まって来て王様たちをもてなし、若者たちは踊りを踊って王様たちを歓迎する。やがて夜もふけて宴も終わると、羊飼いたちは家に戻る。アマールはカスパール王に宝石箱の中に僕の足を治す薬石が入っていないかと問うが、耳の遠いカスパール王は何度も同じことを聞き返すので、アマールは質問をあきらめて自分の藁布団に横たわる。

 皆が床について寝静まっても母親一人は眠れず、つい出来心から積んであった宝石箱の黄金に手を出してしまう。小姓が目を覚まして、泥棒と叫んで母親を捕まえる。皆が起き上がって大騒ぎになる。アマールはそんな母親を必死になってかばいながら、苛(いじ)めないように訴える。アマールは盗んだのは自分で、母親を苛めるならばその人を殴り倒すとまで言う。

 その様子をまのあたりにしたメルヒオール王は、アマールの親孝行ぶりに感激する。そして、その黄金を母親に与えることにして、本来それを与えるべき王様の子供には自分の愛だけで十分だと言う。自分の誤った行為に後悔した母親は、盗んだ黄金を差し出す。アマールも、自分の松葉杖を贈り物にしますと言って差し出す。すると奇蹟が起こってアマールの足が治り、彼は歩けるようになる。

 三人の王様たちはこれぞ神の奇跡だと言って祝福し、アマールに触る。王様たちはアマールを連れて一緒に王様の子供のもとに行かせて欲しいと母親に頼む。アマール自身もぜひ王様たちと一緒に旅をしたいと言う。母親はそれを許し、息子が三人の王様たちとともに旅立つ姿をいつまでも見送る。

 

Reference Materials



初演
1951
1224日 NBCテレビ
(ニューヨーク)

舞台初演
1952
年2月21日 インディアナ大学
(アメリカ)

台本
ジャンカルロ・メノッティ/英語

演奏時間
46
分(シッパーズ盤CDによる)

参考CD
● アレン、キュールマン/シッパーズ指揮/管・唱(RCA

参考DVD
● マカイヴァー、キュールマン/シッパーズ指揮/シンフォニー・オブ・ジ・エア(VAL

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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