領事[全3幕]メノッティ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

アメリカオペラ

G. C. Menotti, The Consul 1947~49

領事[全3幕]メノッティ作曲


登場人物❖

ジョン・ソレル(Br) マグダ・ソレル(S) 秘密警察官(B) 領事の秘書(Ms) コフナー氏(Br) イタリア人の女(S) 他

概説

 アメリカへの入国ヴィザを拒否されて自殺したヨーロッパ人の実話にヒントを得て書かれたオペラで、情景描写と心理描写ともに優れた名作である。1950年のピューリッツァー賞を受賞している。


第一幕

 

 第一場 現代ヨーロッパのどこかの国。ジョン・ソレルの貧しいアパートの一室。通りの向かいのカフェからは、早朝からシャンソンのレコードの音が聞こえている。突然ジョンが家に逃げ帰って来る。妻のマグダは傷ついた夫の足の手当てをしながら、母親に窓を閉めるよう言う。活動家のジョンは、今夜秘密組織の集会に行ったところ、裏切った誰かが秘密警察に通報したために突然警察が踏み込んで来たので逃げて来たのだと言う。

 そこに警察官がジョンを探しに来るので、マグダは彼を屋根裏部屋に隠して、警察官に何も知らないとしらを切り通す。警察官がいなくなると、ジョンは今夜中に国境を越えて逃げる決意をする。そして連絡をする時は少年が家の窓に石を投げるから、連絡係のガラス屋のアッサンを修理に呼べばよいと言う。

 第二場 領事館の待合室。中年の事務的で冷たい女性秘書がヴィザ発給を担当している。最初に呼ばれたコフナー氏は毎日申請しているのにそのたびに書類不備として追い返され、今日も写真のサイズが違うと言われるので腹を立てる。

 次に呼ばれたイタリア人の女性は言葉が通じないので、コフナー氏が通訳してやる。彼女は娘が兵隊と駆け落ちして子供を産むと、その男に捨てられて病気になったのですぐに行きたいと訴えるが、数ヶ月かかると言い、申請用紙を渡すだけである。

 次にマグダが呼ばれる。秘書は外からかかって来た電話では楽しそうに話すが、マグダが事情を話して領事に会わせてほしいと頼んでも、その国の国籍を持っていないのでただ申請用紙を渡すだけである。待合室では手品師が待っている人々を相手に魔術を披露するが、皆はあきらめて去って行く。


第二幕

  

 第一場 一ヶ月ほど後のジョン・ソレルのアパートの部屋。マグダは何回領事館に行ってもらちが明かないと母親に訴える。母親は子守歌を歌ってマグダの子供をあやす。マグダはうたた寝して夢を見る。枝と石を持った血まみれのジョンが、妹だと言って秘書を連れて立っている。彼は子供を見たいと言うが、子供はゆりかごの中で死んでいる。

 マグダが夢から覚めると窓に石が投げ込まれてガラスが壊れるので、さっそく連絡役のガラス屋を呼ぶ。その間に警察官がやって来て、マグダが毎日のように某国の領事館に通っているのを知っていると言い「ご主人の仲間の名前を教えてくれればヴィザ発給の手助けをしよう」と懐柔にかかる。警察官と入れ替わりにガラス屋がやって来て、ジョンは国境近くでマグダがヴィザを取れるのを待っていると伝える。マグダは早く国境を越えるようジョンに伝言を頼む。そしてジョンに渡す荷物を取りに行った時に、子供が死んでいるのに気づく。

 第二場 領事館の待合室。今日もマグダが秘書に領事に会わせてほしいと懇願する。手品師が就業ヴィザを発給してほしいと、身分を証明するために手品の芸を披露して待合室で待つ皆を睡眠術にかける。

 マグダは秘書に特別に順番を繰り上げてもらって領事に会わせてくれるよう頼むと、最善は尽くすがすぐには無理だと言うので、マグダの堪忍袋の緒が切れる。それでも秘書は親切がましく申請用紙にサインするように言う。秘書はようやく領事の部屋へ入って行くが、今領事は大切な来客なので忙しいと言う。間もなく領事の部屋から出て来た客は警察官なので、マグダは驚いて気を失う。

 

第三幕

  

 第一場 数日後の領事館の待合室。秘書はマグダに今日は領事が留守だから待っても無駄だと言う。ヴェラという女性はヴィザが取れたので秘書と喜んでいる。

 ガラス屋がやって来て、子供の死を知ったジョンが戻りたがっていると言い、そうなると仲間がみんな捕まってしまうとそっとマグダに耳打ちする。マグダは自分が死ねばジョンは戻って来ないと思い、自殺を決意した手紙をガラス屋に渡す。マグダもその場を去ると、ヴェラはマグダが忘れたバッグを見つけ、秘書と二人でマグダを呼ぶが、マグダはすでに立ち去った後で返事はない。秘書はどうせ彼女はまた明日来るから、その時に渡せばよいと言う。

 ジョンがこっそりマグダを探しに来ると、警察官が入って来てジョンは逮捕される。秘書は国際法違反だと叫ぶが、警察官はジョンの自由意思で連行するのだと言い、ジョンの同意を求める。秘書は彼に同情して、せめて奥さんには電話で知らせておくと言う。

 第二場 ジョン・ソレルのアパート。まだマグダが帰宅していない家の電話が鳴る。家に戻ったマグダは、ストーブのガス栓をひねって自殺を図る。とした意識の中でまた電話が鳴る。マグダは受話器を取ろうとするが、力尽きて息絶える。

 

Reference Materials



初演
1950
年3月1日 シューベルト劇場
(フィラデルフィア)

台本
ジャン・カルロ・メノッティ/英語

演奏時間
第1幕31分、第2幕57分、第3幕11分(下記DVDによる)

参考DVD
● ヴェヒター、ムゼリー、フィッシャー、コネツニ/バウアー=トイスル指揮/ウィーン・フォルクスオーパー管(Art

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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