ポーギーとベス[全3幕]ガーシュウィン作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

アメリカオペラ

G. Gershwin, Porgy and Bess 1934~35

ポーギーとベス[全3幕]ガーシュウィン作曲


登場人物❖

ポーギー(Br) ベス(S) クラウン(Br) スポーティング・ライフ(T) セリーナ(S) クララ(S) ジェイク(Br) ロビンズ(T) ピーター(T) マリア(A)他

概説

 ジャズの技法やミュージカルの要素を採り入れながら、ガーシュウィンが取り組んだ本格的なオペラである。1935年10月10日からのニューヨーク・ブロードウェイのアルヴィン劇場での上演は、124回のロングランを記録した。


第一幕

 

 第一場 サウス・カロライナ州チャールストンの貧しい黒人居住地、キャットフィッシュ・ロウ。けだるい夏の夜。クララが赤ん坊をあやしながら子守歌を歌う(「サマータイム」)。

 夫の漁師ジェイクが仕事仲間のロビンズや気障(きざ)な麻薬密売人スポーティング・ライフとサイコロ賭博(とばく)に興じていると、蜂蜜売りピーターに続いて足の悪い乞食(こじき)ポーギーが山羊車に乗って戻って来る。ジェイクは、彼が荒くれ沖仲仕クラウンの情婦ベスにのぼせているのを冷やかす。

 そこにクラウンがベスを伴って現れて賭博に加わるが、クラウンはロビンズとけんかになり、彼を殺してしまう。ロビンズの妻セリーナは泣いて夫の亡骸(なきがら)に取りすがる(「彼は逝ってしまった」)。クラウンはベスにせき立てられるようにしてその場から逃げる。

 スポーティング・ライフはベスに麻薬を渡して一人逃げ去る。警官が駆けつけるので皆は家の戸を閉めるが、麻薬で震えが来て逃げられないベスをポーギーがかくまってやる。

 第二場 セリーナの部屋。ロビンズの遺体の上には小皿が置かれ、弔問客は霊歌を歌いながら小皿に献金していく。ベスも献金しようとするとセリーナに拒まれるが、ポーギーが出したお金と知ってセリーナはそれを受け取る。白人刑事と警官がやって来て、皆が犯人はクラウンだと言うのにピーターを連行し、ロビンズの死体を明日中に埋葬しなければ医学校の実験用に供すると脅して去る。

 セリーナは悲痛な歌で夫に別れを告げる。葬儀屋が現れ、小皿の献金がまだ葬儀料金に足りないと言うが、しぶしぶ葬儀を引き受ける。一同霊歌を合唱する。

 

第二幕

 

 第一場 一ヶ月後のキャットフィッシュ・ロウ。ジェイクとその仲間は、クララが止めるのも聞かずに嵐の気配の海に出漁する準備をしている。ポーギーはベスと一緒になってからは幸福そうで、窓から顔を出して陽気に歌っている。

 そこにスポーティング・ライフが麻薬を売りに来るが、隣人マリアに追い払われる。すると今度はいかさま弁護士フレージャーが、ポーギーにクラウンとベスとの離縁状を売りつけに来る。ポーギーはお金でベスに離婚を買ってやることにする。そこにピーターの以前の雇い主が訪れ、彼が身元引受人になってピーターが釈放されたと告げる。

 その時禿鷹(はげたか)が飛んで来るので、皆は不吉なきざしを覚えて家に入る。再びスポーティング・ライフが来るが、ポーギーに撃退され、ポーギーとベスは愛の二重唱を歌う(「ベスよ、おまえはおれのものだ」)。住民たちはベスを誘って皆でピクニックに出かけ、足の悪いポーギーは一人残る。

 第二場 その日の午後のキティワ島。ピクニックも帰りの時間が近づいている。皆は酔って、スポーティング・ライフは聖書を茶化して歌う(「そんなことどうでもいいさ」)。皆は帰り支度をして船へ急ぐが、ひと足遅れたベスの前にこの島に潜んでいるクラウンが現れる。ベスは彼の情熱に負けて、彼に身を任せてしまう。

 第三場 一週間後の明け方のキャットフィッシュ・ロウ。ジェイクは嵐の気配の中をクララに別れを告げて出航する。ポーギーの部屋では、ピクニックで島に二日間一人で取り残されて以来熱のあるベスがうわ言を口走っている。

 しかしベスは元気を取り戻すと、ポーギーにキティワ島での出来事を打ち明ける。彼女はクラウンのもとに帰ると言うが、ポーギーの真情にほだされて一緒に留まることにする。やがて案じられた通り嵐になり、クララは夫の名を呼んで気を失う。

 第四場 未亡人セリーナの部屋。外は大嵐で、人々はセリーナの部屋に集まって神に祈っている。赤ん坊を抱いたクララは「サマータイム」を歌って夫の無事を願う。その時ドアを激しく叩いてクラウンが現れ、ベスを取り戻そうとポーギーを突き倒す。

 皆がクラウンを非難していると、ジェイクの船が河の中で転覆しているのが見える。気が転倒したクララは、赤ん坊をベスに預けて嵐の中を飛び出して行く。誰もクララを助けに行く様子がないので、クラウンは俺が連れ戻したら代わりにベスを連れて行くと言い残して外へ走り出す。

 

第三幕

 

 第一場 夕暮れのキャットフィッシュ・ロウ。人々は嵐の犠牲になったジェイク、クララ、クラウンを弔っている。そこに死んだはずのクラウンが中庭から現れてポーギーを殺そうとするが、彼に逆に殺される。ポーギーはベスに、これでお前の男が決まったと勝ち誇ったように叫ぶ。

 第二場 翌日の午後。刑事が捜査に訪れ、死体確認のためポーギーに出頭を命じる。ポーギーが連行されると、スポーティング・ライフはベスに、一緒にニューヨークへ行こうと誘う。

 第三場 一週間後のキャットフィッシュ・ロウ。住民たちが朝の挨拶を交わしているところにポーギーが釈放されて来るが、ベスがいないので半狂乱になる(「おおベス、おれのベスはどこにいる」)。だが彼女がスポーティング・ライフと駆け落ちしたと聞かされると、ベスが生きているなら必ず探し出して見せると、山羊車に引かれてニューヨークに出発する。

 

Reference Materials



初演
1935
年9月30日 コロニアル劇場
(ボストン)

原作
デュボーズ・ヘイワード/「ポーギー」によるドロシー・ヘイワード夫人の戯曲「ポーギー」

台本
デュボーズ・ヘイワード、アイラ・ガーシュウィン/英語

演奏時間
第1幕57分 第2幕82分 第3幕40分(マゼール盤CDによる)

参考CD
● ミッチェル、ヘンドリックス、クィヴァー、クレモンズ、ホワイト/マゼール指揮/
クリーヴランド管・唱(D

参考DVD
● ヘイモン、ベイカー、ホワイト、エヴァンス/ラトル指揮/ロンドン・フィル、グラインドボーン・フェスティバル唱(EMI

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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