三つのオレンジへの恋[プロローグと全4幕]プロコフィエフ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ロシアオペラ

S. S. Prokofiev, The Love for 3 Oranges 1919~20

三つのオレンジへの恋[プロローグと全4幕]プロコフィエフ作曲


登場人物❖

クラブの王(B) 王子(T) レアンドル(Br) トルファルディーノ(T) 魔術師チェリオ(B) ファタ・モルガーナ(S) クラリーチェ王女(A) スメラルディーナ(Ms) 料理人(B) ファルファレッロ(B) ニネッタ(A) リネッタ(S) ニコレッタ(Ms) 他

 

概説

 プロコフィエフは革命を経たロシアから脱出して、一九一八年に日本を経てアメリカに亡命したが、その時代に書かれた作品のひとつである。いかにもプロコフィエフらしいリズミカルな音楽が、彼のモダニズムへの志向を示している。

 オペラの内容はお伽噺風の物語でありながら、そこにプロコフィエフ特有の風刺が込められている。後に作曲者はオペラの中から六曲を選んで、管弦楽用の組曲を作った。

プロローグ

 

 数組の合唱団が現れて、それぞれ悲劇、喜劇、抒情劇、笑劇など入り乱れて自分たちの考えを主張するが、最後に現れた十人の奇人たちが「三つのオレンジへの恋」と叫ぶ。ラッパ手の音で伝令官が現れて、王子が鬱(うつ)病になったのでクラブの王が後継者問題に悩んでいると伝える。

 

第一幕

 

 第一場 王宮内の大広間。王は王子の病気を心配して名医たちを招いて症状を診察させる。医者たちは王子は不治の心身症であり、その回復には「笑い」しかないという診断をくだすので、姪の王女クラリーチェに王位を渡したくない王は失望する。そこで王は側近のパンタローネに、どうしたら王子が笑うかを相談し、道化師トルファルディーノに王子を笑わせてくれるよう頼む。

 第二場 魔法の幕がおろされた地下から火と煙が立ち昇る。奇人たちが見守る中で、魔術師チェリオと魔女ファタがトランプ勝負に熱中し、魔女が勝つ。

 第三場 宮殿。首相のレアンドルと王女クラリーチェは王位簒奪(さんだつ)を狙う。二人はトルファルディーノが通りかかるのを見て、彼が王子を笑わせる前に王子殺害をもくろむ。その時花瓶が落ちて、机の下から黒人の召使スメラルディーナが現れる。レアンドルは国家の機密を盗聴したスメラルディーナに憤るが、逆に彼女は王子のバックには魔術師チェリオがいるから注意するように忠告する。一方レアンドルには魔女ファタが保護者としてついていると言う。レアンドルとクラリーチェはその魔女が到来することを願う。

 

第二幕

 

 第一場 王子の寝室。トルファルディーノは滑稽なしぐさで王子を笑わせようとするが、彼はしきりに唾を吐くだけで笑わない。彼はすべての薬と痰つぼを外に投げ捨て、王子を着替えさせてお笑い祭りに連れ出そうとする。

 第二場 宮殿の庭。王族たちが集まり、どんな余興が始まっても王子は笑おうとしない。

 しかしトルファルディーノと魔女ファタが言い争いになり、魔女ファタが転ぶと王子が笑い出すので、魔女ファタは「三つのオレンジに恋をしろ」と呪いをかけて姿を消す。

 

第三幕

 

 第一場 砂漠。魔術師チェリオは悪魔ファルファレッロを呼び出して王子の所在を尋ねるが、悪魔はトランプ勝負に負けたお前の呪文は効かないと言う。そこにトルファルディーノを連れた王子が現れる。魔術師チェリオは、王子に三つのオレンジは魔女クレオントの城にあることを教え、そこにいる恐ろしい料理女に注意するように言い、魔法のリボンを与える。

 第二場 魔女クレオントの城。台所に忍び込んだ王子たちは三つのオレンジを見つけるが、ひしゃくを持った料理女に発見されてしまう。しかし彼女が魔法のリボンに見とれている間に王子たちはオレンジを運び出す。

 第三場 砂漠。二人はオレンジを運んで来るが、その間にオレンジは巨大化する。疲れた王子が休んでいる間に、喉が渇いたトルファルディーノはオレンジを割って水分を取ろうとすると、中からリネッタ王女が現れて水をせがむ。そこで次のオレンジを割ると、今度はニコレッタ王女が現れ、彼女も水を求める。二人とも水がなくて死んでしまうが、ようやく目覚めた王子が残ったもう一つのオレンジを割ると、ニネッタ王女が現れてやはり水を求める。そこに突然奇人たちが現れて水を与える。

 ニネッタと王子はたちまち愛し合い、王子はニネッタを宮廷に連れて行くために彼女の衣裳を取りに行く。その隙にスメラルディーナと魔女ファタが姿を現し、ニネッタの頭に魔法のピンを刺して彼女を鼠の姿に変えてしまう。スメラルディーナは王女のいた場所に座って、戻った王子に自分がニネッタだと言い張る。集まった宮廷人に王子は謀略だと訴えるが、レアンドルとクラリーチェはほくそ笑む。

 

第四幕

 

 第一場 魔術師チェリオは、魔女ファタに魔法のピンを使ったのは卑劣だと非難する。奇人たちが現れて、魔女ファタを城の塔に閉じ込めてしまう。

 第二場 王宮の広間。王子とスメラルディーナが入って来ると、王妃の席に大きな鼠が座っているので皆は驚く。魔術師チェリオの呪文で衛兵たちが発砲すると鼠はニネッタの姿に戻り、王子は彼女に駆け寄って抱き合う。王はレアンドルとクラリーチェの策略に気がつき、スメラルディーナとともに絞首刑を言い渡す。トルファルディーノが三人の助命を乞い、彼らは魔女ファタに連れられて逃げ出す。残った全員が王子と王女に祝福を与える。

 

Reference Materials



初演
1921
年12月30日 シカゴ歌劇場

原作
カルロ・ゴッツィ/「三つのオレンジへの恋」

台本
セルゲイ・プロコフィエフ/ロシア語

演奏時間
プロローグ4分、第1幕24分、第2幕24分、第3幕41分、第4幕16分(下記DVDによる)

参考DVD
● ヴェルヌ、ドゥフォンテーヌ、ペトリンスキー、ル・ルー、ピオー/ドゥネーヴ指揮/ロッテルダム・フィル、ネーデルランド・オペラ唱(仏語盤)(DEN

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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