戦争と平和[全2幕]プロコフィエフ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ロシアオペラ

S. S. Prokofiev, War and Peace 1941~52

戦争と平和[全2部]プロコフィエフ作曲


登場人物❖

アンドレイ・ボルコンスキー公爵(Br) ナターシャ・ロストフ伯爵令嬢(S) ソーニャ(Ms) マリヤ・アフローシモヴァ(Ms) ピエール・ベズーホフ伯爵(T) エレン・ベズーホワ伯爵夫人(Ms) イリヤ・ロストフ伯爵(B) アナトーリ・クラーギン公爵(T) ヴァスカ・デニーソフ(Br) ナポレオン・ボナパルト(Br) ミハイル・クトゥーゾフ将軍(B) 他

 

概説

 プロコフィエフがトルストイの「戦争と平和」のオペラ化を考えたのは、原作のアンドレイとナターシャの再会にオペラティックなものを感じたからだと言われるが、折から対独戦争が始まり、ナポレオンをナチス・ドイツに置き換えて愛国的な意義を加えることになった。作曲後ソビエト政府の干渉などもあってたびたびの改編が加えられ、第一版が完成したのは1943年だった。さらに演奏会形式の初演を指揮したサモスードに二夜に分けて上演することを提案されるなど、紆余曲折(うよきょくせつ)の末に1952年に全13場の最終版が完成した。プロコフィエフのライフワークといえる超大作である。


第一部「平和」

 

 第一場 1809年の春。若い貴族アンドレイはロストフ伯爵の家に一泊する。すると二階の窓に美しい伯爵令嬢ナターシャが姿を現し、従妹のソーニャと無邪気に美しい春をたたえる。アンドレイはたちまちナターシャに好意を抱く。

 第二場 サンクトペテルブルクの高官の館の舞踏会。ロストフ伯爵が娘のナターシャと姪のソーニャを連れて現れる。続いてアンドレイの親友であるピエール伯爵が美貌の妻エレンとその兄アナトーリとともにやって来る。ピエールはアンドレイに対して、華やかな場に慣れずに寂しそうなナターシャを踊りに誘うように勧めるので、アンドレイは踊っているうちにますます彼女に惹かれる。

 第三場 モスクワのボルコンスキー公爵邸の客間。アンドレイは父ボルコンスキー公爵の反対を押して、貧乏貴族ロストフ伯爵の娘ナターシャと婚約する。公爵は息子に対して、一年間国外を離れてもなお彼女との愛が変わらなければ結婚を認めると言う。彼の留守中、ナターシャは父親ロストフ伯爵と連れ立ってボルコンスキー邸を訪れるが、公爵は面会を拒否する。公爵の娘マリヤが現れて二人を慰めているが、そこに入って来た公爵の態度にナターシャは屈辱感を覚える。

 第四場 ピエール・ベズーホフ伯爵家の居間での舞踏会。ピエール伯爵の妻エレンは、名うての遊び人の兄アナトーリがナターシャに恋している旨を彼女に告げる。自分を見失ったナターシャは、ソーニャの忠告も耳に入らずにアナトーリに心を動かす。

 第五場 ドーロホフ家の書斎。アナトーリはナターシャと駆け落ちすることになり、友人のドーロホフがその準備を手伝っている。彼はアナトーリがナターシャをだまして結婚すると重婚の罪になると警告するが、彼はドーロホフの警告を無視してナターシャのもとに走る。

 第六場 アフローシモヴァの邸宅。両親がモスクワを不在にしている間、ナターシャはアフローシモヴァ家に預けられているが、駆け落ちのために迎えに来るアナトーリを待っている。しかし彼らの企みをソーニャがアフローシモヴァ夫人マリヤに告げたために駆け落ちは失敗し、ナターシャは半狂乱になる。訪れたピエール伯爵は、彼女にアナトーリが既婚者であることを告げるが、ピエール伯爵自身もナターシャに愛情を抱いている。

 第七場 ピエール・ベズーホフ伯爵家の書斎。ピエール伯爵は家に戻ると妻エレンがアナトーリや神父、医者などを迎えてもてなしているのをとがめ、アナトーリにモスクワから立ち去るように言う。

 

第二部「戦争」

 

 第八場 ボロジノ平原のロシア軍陣地。アンドレイはナターシャの元恋人だったデニーソフ大佐から、パルチザンの戦い方について学ぶ。ピエール伯爵がアンドレイを励ましに訪ねて来て、ナターシャに対する恋から自分を見失っていたことに気づく。そこに大佐がナポレオン軍の集結を伝えるので、兵士たちは攻撃に向かう。

 第九場 シュワルジノのフランス軍陣地。フランス軍の司令官ナポレオンは自軍の勝利を確信しているが、不利な戦況ばかりが伝わるので作戦が混乱する。副官が予備軍の出動を要請する。至近弾が落ちるが、ナポレオンは平然としている。

 第十場 フィリの農家。ロシア軍の作戦会議が開かれている。クトゥーゾフ将軍は、いったんモスクワから退却することを命じる。

 第十一場 モスクワの街路。ロシア軍が退却したモスクワは人影もまばらで、フランス軍は略奪を繰り広げる。モスクワに戻ったピエール伯爵は、負傷したアンドレイとロストフ伯爵家が街から避難したことを知る。フランス軍に占領されることを恐れたモスクワ市民は自ら街に火を放つので、街は火の海になる。ピエール伯爵はスパイとしてフランス軍の捕虜となる。

 第十二場 モスクワ郊外の農家。瀕死のアンドレイのもとをナターシャが訪れる。彼女は自分の不実を詫び、アンドレイは彼女の腕の中で死ぬ。

 第十三場 スモレンスクの街道。激しい吹雪の中を、捕虜を連れたフランス軍が退却して行く。そこに大佐が率いるパルチザン部隊が現れて捕虜を解放し、ピエール伯爵も助けられる。自由になったピエール伯爵は、アンドレイと妻エレンの死と、ナターシャの無事を知らされる。クトゥーゾフ将軍がロシアの勝利を宣言して、市民は歓喜で祖国をたたえる。

 

Reference Materials



初演
1945
年6月7日 モスクワ音楽院大ホール(第1版演奏会形式) 1955年4月1日 マールイ劇場(レニングラード)(最終版)

原作
レオ・トルストイ/「戦争と平和」

台本
セルゲイ・プロコフィエフ、ミラ・メンデリソン/ロシア語

演奏時間
第1部96分、第2部108分(ベルティーニ盤DVDによる)

参考DVD
● ガン、グリャコーワ、マームシロワ、ボムシテイン、オブラスツォワ/ベルティーニ指揮/パリ・オペラ座管・唱(DEN

● オホトニコフ、ゲルガロフ、プロキナ、グリゴリアン、ボロディナ/ゲルギエフ指揮/キーロフ歌劇場管・唱 (NMC

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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