金鶏[プロローグとエピローグを持つ全3幕]リムスキー・コルサコフ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ロシアオペラ

N. A. Rimsky-Korsakov, Le Coq dÅfOr 1905~07

金鶏[プロローグとエピローグを持つ全3幕]リムスキー・コルサコフ作曲


登場人物❖

ドドン王(B) グヴィドン王子(T) アフロン王子(Br) 軍指揮官ポルカン(B) 女官長アメルファ(A) 星占い師(T) シェマハの女王(S) 金鶏の声(S)

 

概説

 リムスキー=コルサコフのオペラが日本で上演される機会は少ないが、これはリムスキー=コルサコフ最後のオペラとなった円熟期の作品である。

 風刺とユーモアにあふれた内容は、折から日露戦争に敗れた帝政ロシアの独裁と無能ぶりを批判したものと取られ、作曲者が望んだような本格的な形で上演されるのは革命後の一九一七年以降のことである。近年はしばしば上演されるようになった。

 

プロローグ

 

 星占い師が幕の前に現れて、自己紹介とこれから古いお伽噺が始まると言い、若い人々の教訓になるようにと前口上を述べる。

 

第一幕

 

 ドドン王の宮殿。かつては勇名を馳せたドドン王も、最近は歳をとって気楽な生活に入りたい。しかし近隣諸国の侵攻の危機が去らないので、どう対処したらよいかと貴族たちに意見を求める。

 年長のグヴィドン王子は、軍勢を首都周辺に集結して英気を養っておいて、最後に反撃すればよいと言い、弟のアフロン王子は軍隊を解散して、非常事態が起こりそうな時に召集して攻撃を仕掛ければよいと言う。王はどちらも良い案だと思うが、老練な軍指揮官ポルカンはどの案についても欠点を指摘するので、会議では結論が出ない。

とはいえ、軍指揮官も妙案を持ってはいない。そこで貴族たちの中から占い師か魔法使いに相談すべきだという声があがる。そのどちらが良いのか言い争っているところに、星占い師が現れる。

 彼は王に敵の襲撃を予知する能力がある金鶏を献上し、この鶏は普段はおとなしいが、有事の際に「キリキ!キリキ!警戒しろ」と鳴いて知らせてくれると説明する。皆はこの不思議な金鶏に驚き、王はこの金鶏を番兵の代わりに都の尖塔にとまらせて見張りをさせるよう命じる。大喜びの王は、星占い師にどんな望みでもかなえようと言う。星占い師は権力も富もいらないから、王の約束を文書にすることを求める。王は自分の言うことは法律と同じだから、いつでも必要な時に申し出ればよいと言うので、星占い師は喜んで帰って行く。

 金鶏が「キリキ!ごろ寝をして治めよ」と鳴くので、王は安心しきって眠りにつく。元のぐうたらな生活に戻り、夢の中で不思議な乙女を見る。すると金鶏が突然「キリキ!キリキ!警戒しろ」と叫ぶ。人々は驚き、軍指揮官が王のもとに馳けつける。王はさっそく軍を派遣することにして二人の王子に出陣を命じるが、気の進まない二人は理由をつけて尻込みをする。そこで精鋭の兵士をつけて、王子たちを無理やり戦地に送る。金鶏がまた「キリキ!ごろ寝して治めよ」と鳴くので、王は安心して再び横になる。夢心地で町も静かになったところ、再び金鶏が「キリキ!キリキ!警戒しろ」と叫ぶ。王は残った老兵部隊を率いて、軍指揮官とともに出陣する。

 

第二幕

 

 夜の岩場の谷間。王は二人の息子が敵の策略によって同士討ちで死んでいるのを見て驚くが、軍指揮官に励まされる。東の空が明るくなった頃、突然大きなテントが目の前に見え、その中からシェマハの女王と名乗る美女が現れて太陽への讃歌を歌う(「答えたまえ、英明なる天よ」)。

 彼女の美しさに魅せられた王は、それが狡猾な策略とも知らずに誘惑に乗って彼女に求婚する。王はもとより、軍指揮官もドドンの兵士たちも彼女と同じ東方の衣裳に着替えさせられる。王は彼女にたぶらかされたままそろって首都に帰還することになり、兵士たちも万歳の声をあげる。

 

第三幕

 

 王宮の前の広場。人々が王のことを心配していると、女官長アメルファは、王子たちは戦死し、王は花嫁を連れて帰還すると告げる。凱旋パレードとともに王の一行が戻ると、金鶏を贈った星占い師が現れ、王に女王を譲ってほしいと願い出る。王は彼の希望は何でもかなえるが、彼女だけは譲れないと言う。しかし星占い師は約束の履行を迫る。立腹した王は杖で彼を叩いて殺してしまう。王は後悔して天の祟りを恐れるが、女王は平気な様子である。そこで王が女王に接吻しようとすると、彼女は王を馬鹿にしてせせら笑う。するとそれまでおとなしくしていた金鶏が飛んで来て「キリキ!キリキ!老いぼれの頭を突くぞ」と鳴いて王に襲いかかる。王は倒れ、女王も消え去る。民衆は悲しみの中に今後の国の行く末を心配する。

 

エピローグ

 

 死んだはずの星占い師が現れて、話は血なまぐさいが、実在の人間は自分と女王だけだから心配はいらないと言って姿を消す。

Reference Materials



初演
1909
年9月24日 ジーミン劇場(モスクワ)

原作
アレクサンドル・プーシキン/「金の鶏の話」

台本
ウラディーミル・ビェルスキー/ロシア語

演奏時間
プロローグ5分、第1幕34分、第2幕41分、第3幕20分、エピローグ6分(ナガノ盤DVDによる)

参考DVD
● シャギドゥーリン、レヴィンスキー、ブレーウス、トリフォノワ/ナガノ指揮/パリ管、マリインスキー劇場唱(DEN

● ミハイロフ、ミシェンキン、ムンダエフ、ジューリナ/スヴェトラーノフ指揮/ボリショイ劇場管・唱(NHK

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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