エウゲニ・オネーギン[全3幕]チャイコフスキー作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ロシアオペラ

P. I. Tchaikovsky, Eugene Onegin 1877~78

エウゲニ・オネーギン[全3幕]チャイコフスキー作曲


登場人物❖

タチヤーナ(S) ラーリナ(Ms) オリガ(A) フィリッピエヴナ(Ms) エウゲニ・オネーギン(Br) レンスキー(T) グレーミン公爵(B)他

 

概説

 作曲者自身この作品を「オペラ」とは呼ばずに「抒情的情景」と呼んだように、音楽はあくまでも登場人物の性格や感情を心理的に歌い上げており、オーケストラも声を圧迫するような力強さを避けている。しかしそのドラマティックな盛り上がりは、チャイコフスキーの美しい旋律と有機的に結びついて、雄弁な説得力を持っている。マールイ(小)劇場での初演は成功しなかったが、1884年サンクトペテルブルクの帝室歌劇場でグランド・オペラとして上演されて以来、広い人気を博すようになった。

 

第一幕

 

 第一場 のラーリン家の庭。家の中から聞こえてくる娘のタチヤーナとオリガの歌声を耳にしながら、未亡人のラーリナは乳母のフィリッピエヴナと昔話をしている。そこに小作人たちが刈入れの収穫物を届けに来て、陽気に歌い踊る。

 姉妹はテラスに出て来てその様子を眺めている。夢見がちのおとなしい姉タチヤーナに対して、陽気な妹オリガは快活に歌う(「私は陽気にするの、悲しむなんて柄じゃない」)。ラーリナは農夫たちに酒をご馳走(ちそう)すると言って彼らを離れの方に招く。

 そこにオリガの婚約者レンスキーが友人オネーギンを伴って訪れる。タチヤーナは紹介されたインテリ風のオネーギンを見て理想の男性と感じ、二人は語り合う。一方レンスキーは率直にオリガに対する純粋な愛を歌う(「私は君を愛す、オリガよ」)。ラーリナと乳母が皆を食事に呼びに来るので、一同は家の中に入る。

 第二場 タチヤーナの部屋。恋に落ちたタチヤーナは眠れないので、乳母に彼女の初恋の物語をせがむ。やがて一人になると、彼女は素直に純真な愛の気持ちを綴ったオネーギンへの手紙を書き(手紙の場「たとえ死んでもいいの」)、朝になるのを待ってそれを乳母に託す。

 第三場 ラーリン家の庭。いちごを摘む乙女たちの声が聞こえる。タチヤーナが現れて手紙を書いたことを恥じて後悔しているところに、当のオネーギンがやって来る。

 赤面するタチヤーナに向かって、オネーギンは自分は結婚には向かない男だが、妹のようにタチヤーナを愛そうと分別臭い説教をする。タチヤーナは恥辱と絶望に首をうなだれるが、オネーギンは彼女の手を取って家の方に向かう。

 

第二幕

 

 第一場 ラーリン家の大広間。前幕から数か月後のある日。タチヤーナの聖命の日の祝いに人々が集まってワルツを踊っている。タチヤーナと踊るオネーギンを見た女性たちが、あの男は遊び人で変人だと噂をするので、自分の噂話にオネーギンは不愉快になる。

 彼はこのパーティに誘ったレンスキーへの腹いせに、オリガに踊りを申し込む。コケティッシュな彼女は喜んで相手をするので、レンスキーは苛立つ。フランス人のトリケがタチヤーナに捧げるクープレを歌う。その後もオネーギンはオリガとばかり踊るので、嫉妬(しっと)心を抑え切れなくなったレンスキーは、ついにオネーギンに決闘を申し込む。

 華やかな舞踏会は一瞬にして騒然となる。レンスキーはしばしオリガとの恋の想いにふけり、軽はずみな行動で平和を乱したことを後悔するが、皆が止めるのも聞かずにオリガに別れを告げると、オネーギンと決闘のために飛び出して行く。

 第二場 雪の積る水車小屋の前。レンスキーは介添人ザレツキーとともにオネーギンが現れるのを待っている。そして青春はどこへ行ってしまったのかとオリガへの愛を切々と歌う(「青春は遠く過ぎ去り」)。

やがてオネーギンが召使とともに現れる。二人はかつての親友が今では敵同士になってしまった無念な胸中を歌う。ザレツキーは二人にピストルを渡して、決闘開始の合図に手を三つ叩く。レンスキーが倒れ、オネーギンは恐怖に手で顔を覆う。

 

第三幕

 

 第一場 サンクトペテルブルクのグレーミン公爵邸の大広間。華やかな舞踏会が開かれ、ポロネーズの音楽に乗って皆が踊っている。親友を決闘で殺してから数年間放浪の旅に出ていたオネーギンが姿を現すが、踊りに加わる気にはなれない。

 老グレーミン公爵に伴われて公爵夫人が登場する。オネーギンはすぐにそれがタチヤーナだと気づき、昔に比べて見違えるほど成熟した女性になったのを知る。タチヤーナもオネーギンの姿を認めて愕然とする。

 この二人が旧知の仲とも知らずに、グレーミン公爵は歳は離れていても愛には関係ないと言って夫人をオネーギンに紹介するので(「恋は年齢を問わぬもの」)、タチヤーナは冷静にオネーギンに挨拶をする。タチヤーナがその場を離れた後、オネーギンはあの人があの少女だったのかと独白して、再び燃え上がる彼女への激しい恋を感じる。

 第二場 グレーミン公爵邸の客間。タチヤーナがオネーギンから来た手紙を手にして涙ぐんでいる。思いもかけないオネーギンとの再会に心は乱れ、彼への恋心を抑え切れずに当惑している。そこにオネーギンがやって来て、タチヤーナへの恋を打ち明ける。タチヤーナは昔は自分を冷たく拒否したのに、今になって何を言うのか、現在は人妻だから昔には戻れないとオネーギンを諌(いさ)める。オネーギンの情熱的な訴えかけにタチヤーナは打ち負かされそうになるが、最後にきっぱりとオネーギンに貞節を守ると告げ、永久の別れの言葉を残して立ち去る。オネーギンは恥辱と悲しみに絶望の言葉を発する。


Reference Materials



初演
1789
年3月29日 マールイ劇場(モスクワ)

原作
アレクサンドル・プーシキンの同名長篇詩

台本
コンスタンチン・シロフスキー、ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/ロシア語

演奏時間
第1幕72分、第2幕44分、第3幕35分(レヴァイン盤CDによる)

参考CD
● フレーニ、フォン・オッター、シコフ、アレン、ブルチュラーゼ/レヴァイン指揮/ドレスデン・シュターツカペレ(DG

● ボロディナ、フォチーレ、シコフ、ホロストフスキー、アニシモフ/ビシュコフ指揮/パリ管、サンクトペテルブルク室内唱(PH

参考DVD
● ホロストフスキー、フレミング、ザレンバ、ヴァルガス/ゲルギエフ指揮/メトロポリタン歌劇場管・唱(D

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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