ピリオド楽器コンクール2023観戦&取材日記 by月刊ショパン【2日目 10月7日】

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第1ステージ2日目が終了しました。

今日は午前に日本人が4人、午後に1人と日本人DAY。客席にも昨日は見かけなかった応援の日本人らしき姿がちらほらと見られました。
映像審査による予選を経て、第1ステージに進んだ日本人は10人。なんと開催地のポーランド勢の6人を上回る人数。これにはショパン研究所の方々もびっくりされたのか、今年初夏に配布されたプレス向けの資料も日本語版を作ってくださっていました。



日本でも注目度の高いショパン国際ピリオド楽器コンクール。
実は私も個人的にこのピリオド楽器コンクールにとても思い入れがありました。ここからは個人的な話にお付き合いください。

♪ ♪ ♪

実は私、大きな声では言えないのですが、ショパンの音楽がそこまでそんなに好きではありませんでした。なぜという説明は難しいのですが、他の作曲家にはあまり感じない「なんでそこはそういうフレーズや音が入るの????」という"謎の違和感"があったのです。

ところが世の中にはショパンが好きな方の多いこと多いこと。熱狂的なショパンファンの方々が存在していることは知っていましたし、クラシック愛好家でなくても「ショパンは好き!」という方もいらっしゃいます。それなのに私ときたら……。世の中の「ショパンっていいよね〜」に賛同できないまま、『月刊ショパン』を作っていたのでした。

それでもやっぱりショパンのことを知りたいし、ショパンの音楽と仲良くなりたいと思っていた私は、「ショパンは"プレイエル”というメーカーのピアノを愛用していた」ということを知ります。そこにショパンを好きになる手がかりがあるのでは? と思ったのでしたが、プレイエル社はとっくに倒産しているし、新品のピアノも作られていない。それなら一生聴くことはできない幻のピアノじゃん! と忸怩(じくじ)たる思いだったわけです。

そんなとき、知人から演奏会の案内をいただきました。それは、プレイエルのピアノを使ってショパンの作品を演奏するというもの。「プレイエルでショパンが聴けるんだ!」と期待に胸を膨らませ渋谷のタカギクラヴィア 松濤サロンへ馳せ参じたのでした。渋谷の雑踏から壁2枚ぐらいを隔てて、こんなに貴重な楽器が置いてあるのかと驚きました。

初めて聴くプレイエルでのショパン。それは私のショパンへの違和感を見事に払拭してくれました。「そんな単純な話があるんかい!」と思うかも知れませんが、あったのです。

「なぜここにそんなフレーズが???」と思っていた箇所は、プレイエルの音色で聴くととても「?」が「!」になり、目の覚めるような感覚になりました。光の当たり方が変わればものが違って見えるような、同じ形のものでも素材が違えばまるで印象が変わるようなそんな体験でした。

「ショパンよ! 君の描きたかった音がわかったぞ」

ショパンを聴く耳を開いてくれたのがピリオド楽器だったのです。

そんなきっかけを与えてくれた方は、今日のステージに立っていて、とても素敵な演奏を聴かせてくれたのでした。その方の先生も、「真面目で不器用な子なんですよ。でも今日はほっとしました」と、日本人の観客の皆さんからの「素晴らしい演奏でしたね」の言葉に応えながら「いや〜よかった」と目尻を垂らしてにこにこ。とてもうれしそうでした。
先生からは「応援してくださってありがとうございます」なんて、おっしゃっていただきましたが、いやいや! お礼を言いたいのはこちらの方です‼‼



さて、今日のロビーこぼれ話ですが、昨日に引き続いて前回のピリオド楽器コンクールにとても深く関わられた方が聴きにいらしていました。

「いかがですか?」と感想を聞かれると、「前回よりも格段にレベルが上っているけれども、ピリオド楽器の経験値が演奏からはっきりと見て取れる」と、おっしゃっていました。いやはや本当に難しいコンクールです。弾きたいと思っても、ピリオド楽器はどこにでもたくさんあるわけではないし、技術者さんからの特別なサポートも必要になります。

そんな特別なピリオド楽器、コンテスタントたちは期間中どこで練習しているのか教えていただいたところ、ショパン音大のピリオド楽器を借りて練習しているのだそうです。練習時間は一人3時間らしく、あるコンテスタントさんは「3」の数字にも根拠があるのではないかとのこと。

「ショパンは『1日3時間以上練習してないけない』と言っていたからじゃないかな? ハハハ!」

ショパンジョークですね!


今日のワルシャワは小雨がぱらついていました。ステージが進むと共に、ワルシャワの秋も深まっていきそうです。


(文/東ゆか)












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