ピリオド楽器コンサート観戦&取材日記 by月刊ショパン【5日目 10月11日 東海林茉奈さんインタビュー】

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第2ステージ2日目。2日にわたって、課題のマズルカ、ワルツ、ソナタのオールショパンを聴いていると、いよいよ”ショパンコンクール”の様相を呈してきた感が。といっても、一日あけてすぐにファイナルが始まってしまうので、10日間にもわたるコンクールですが意外とあっという間だなと感じています。
今夜はいよいよファイナル出場者が発表されます。

第2ステージでは多くの日本人コンテストがワルシャワを離れてしまいましたが、客席には第1ステージに出場した東海林茉奈さんの姿がありました。


▲一音一音に神経が行き届いた、ロマンチックで繊細な演奏を披露してくれました



——第1ステージおつかれさまでした。ご自身の演奏を振り返っていかがでしたか?

ピリオド楽器での演奏だったので、繊細に弾くことを心がけました。特に、ウィーン式の楽器(※東海林さんはイギリス式のプレイエルの他に、ウィーン式のブッフホルツとグラーフを選択)は鍵盤も浅く、コントロールが難しいです。少しの加減でうるさくも、美しくも鳴ってしまいます。そんな楽器だからこそ繊細に響かせたいと思いました。ただ、もしかすると繊細に弾きすぎたのかもしれませんね。
結果は受け止めていますが、こういった大きな規模のコンクールは審査発表の後に、審査員の方とお話できる機会があるもの。しかし、今回はその時間がなく直接講評をいただけなかったのが残念でした。

——第2ステージ1日目の演奏は、東海林さんのお隣で聴かせていただきました。背もたれに深くもたれずにほんの少し前のめりで、全身で聴こうとしている気配を感じました。午後の3人の方の演奏を聴かれていましたね。

エリック·ゴウさんのマズルカがとても印象的でした。本当に素晴らしかったです。

——東海林さんがピリオド楽器を始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

藝大の副科で小倉貴久子先生のもとで2年間勉強していました。それ以降は興味はすごくありつつも環境が揃わなくて、触れる機会がありませんでした。それから今回のコンクールの存在を知って、今年の2月からショパン協会の練習室で練習させていただいていました。



——ピリオド楽器に魅せられている理由はなんですか?

一番大きな理由は、ただただショパンに近づきたいという気持ちです。私は大学院のときにショパンをテーマに論文を書きましたし、ショパンを深く勉強したいと思っています。現代の楽器の音をショパンは知らない。だからショパンが生きていた時代のピアノの音を知らずしてショパンを弾けるわけがないとずっと思っていたときに、このコンクールの存在を知りました。
ピリオド楽器で弾くことでショパンの謎も解けていきます。ショパンのペダルの表記はたまにすごく不思議。でもプレイエルで弾くと「こういうことなのかも……!」と思ったりもするんですよ。
また、私は繊細さや表現力を追求したいタイプなので、自分自身にもピリオド楽器が合うかなと思っています。実際に触れてみてもこの音が好きです。



——今後もピリオド楽器での演奏を続けていきたいですか?

はい。練習環境を作るのが難しいですが、作品理解のためにも続けていきたいと思っています。
ショパン協会が貸してくれている楽器で練習できていましたが、日本に帰国したときにピリオド楽器に触れる機会や練習場所をどう確保できるかが大きな課題ですね。日本は楽器の所蔵自体も少ないです。

——今後はどのような勉強をしてどんなピアニストになりたいですか?

一番の目標はショパンの全曲演奏会をすることです。ただし、ショパンだけを弾いていてもショパンを理解できるわけではないので、バッハやモーツァルトといったショパンが尊敬した作曲家や、ベートーヴェンなども自分の糧として勉強しながらショパンに取り組んでいきたいと思っています。


♪ ♪ ♪


「ショパンに近づきたい——」。ショパンの音楽への純粋な愛と一途さ。
お話をしていただいているときの東海林さんの視線のまっすぐさがとても印象的でした。




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