また第2ステージでも、すべてのコンテスタントが選んだのは同じく1842年製のプレイエル。
その理由を尋ねると、照れくさそうに、そしてうれしそうに「ショパンが愛した楽器だから」というリスペクトを口にするコンテスタントが多い印象がありました。

▲第3ステージ1日目はAngie Zhang(USA)、Eric Guo(カナダ)が1842年製プレイエル、Yonghuan Zhong(中国)がエラールでピアノ協奏曲第1番を演奏しました。
そんなプレイエルと、同じくショパンがパリで愛用したエラールの調律を務めているハイダさんに、今回使用された1842年製エラールについてお聞きしました。

普段はオランダのピアノ工房にいらっしゃるハイダさん。前回の第1回大会の際にも調律を担当しました。
——200年も経っている楽器ですが、パーツはどのくらいがオリジナルなのでしょうか?
ハイダ「ほとんどオリジナルです。響板の高音部が割れていましたが、新しく取り替えるのではなく、いったんバラしてにかわで貼り直しています。
チューニングピンが埋まっているピンブロックは、200年も経っているので割れたり緩んだりしていたので、その部分は交換しています」

——アクションもですか?
「はい。ハンマーヘッドのフェルトもおそらくオリジナルですが、フェルトの上に張ってある鹿革は交換しています。
ヴォイシング(※ピアノの音色を変えるために、針を指してハンマーの緊張を取る作業)の際は、革とフェルトの間に耳かきのような空気を入れてソフトな音にしています。打鍵によって、革が弦と圧着して固く押しつぶされてるので、それを緩める必要があるんです。
少しやりすぎてしまったら、ブラシで革の表面を擦って微調整します。

▲耳かきのような道具でヴォイシング中
——プレイエルの魅力を教えてください!
「プレイエルはコントロールが難しい楽器。現代ピアノと違って、打鍵したときの鍵盤の戻りが遅いので、その構造を理解して演奏する必要があります。ピアノやフォルテの音を出すためにより高い技術が要求されることですね」
——テクニックを駆使して紡ぎ出されるピアノやフォルテの音に、毎日感動しています!
コンテスタントたちの繊細な演奏を支えるハイダさん。毎日フル稼働の中、快くインタビューに応じていただき、ありがとうございました。
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各楽器の調律師インタビューは、月刊ショパン2023年12月号「第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクール」特集号と、ショパン公式YouTubeチャンネルでも掲載&公開予定です! どうぞお楽しみに!


▲エラールについては、ぜひYouTubeと本誌をご覧ください!