楽器の事典ヴァイオリン 2章 オールド・ヴァイオリンの名器 38 彼のヴァイオリン 

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彼のヴァイオリン

 ヨーゼフにも、自尊心から、彼自身の好みと技術を使って優れたヴァイオリンを作り出そうとする野望があった。しかし、気の毒なことに、彼の楽器に高い値段がつけられたことは1度もなかった。その理由は、彼は金銭的な余裕がなく、父のアンドレアと同様に、安価な材料しか使わざるを得なかったためである。地元の楓を使い、時には板目の裏板を用い、最悪の場合は、ポプラなどの、異った材料を使用したのである。そのため、彼のヴァイオリンには裏板と側板とスクロールが調和しないものすらある。
 彼は、隣人のストラディヴァリの存在によって、常にナンバー2の位置に甘んじなければならなかった。
 1715年以降、ヨーゼフは違ったモデルのヴァイオリンを作り始めた。それらは胴がやや長くて大きいもので、デザインは力強く、f字孔も重々しく、さまざまな色のニスを使っている。しかし、不思議なことに、彼のヴァイオリンの多くにはラペルが貼ってない。そのため、専門家の間で、判定について、しばしば混乱が起きる。一説に、カルロ・ベルゴンツィが手を貸したともいわれている。ペルゴンツィは、若い頃から、ヨーゼフの工房で修業したのであるから、その結果として、ペルゴンツィの楽器の特徴がガルネリのものと酷似したものとなったのであろう。ストラディヴァリとの共通点はほとんど見当たらない。


楽器の事典ヴァイオリン 1995年12月20日発行 無断転載禁止



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