
ヒル商会
この点で、1875年にヴィヨームがこの世を去った後に、引き継いでオールド・ヴァイオリンの取扱いで名声を博したのは、ロンドンのヒル商会であった。ヒル商会は、1887年に、ロンドンのニュー・ボンド・ストリートに設立されたもので、そのメンバーにはヴァイオリンの鑑定家、演奏家および事業家のすべてのベテランが揃っていて、特にオールド・ヴァイオリンに関するギャランティつまり証明に関しては世界的な信頼を持ち続けていた。
ヒル・アンド・サンの名称はヴァイオリン界では絶対なもので、数え切れないほどの珍らしい楽器、名器、ラベル、駒およびスクロールなどを集め、さらにハンウエルに工房を持ち、フランスのミルクールその他から集めた多くの技術者を使い、優れた楽器の他に、特に入手し難い最高のペルナンブコの材料を使って、フランスの名弓に匹敵する素晴らしい弓を作り続けていた。 なお、『ストラディヴァリ』その他の貴重な専門書も出版している。
なお、ヒル商会の他に、世界のオールド・ヴァイオリンを支配した有名なヴァイオリン商としては、ドイツのシュトゥットガルトのハンマ商会、アメリカのニューヨークのウーリッツァー商会およびロンドンのベアー商会などがある。
これらの代表的な商会が20世紀のオールド・ヴァイオリンの市場を支配していたのである。
楽器の事典ヴァイオリン 1995年12月20日発行 無断転載禁止
▶︎▶︎▶︎第1章 36 巨大なヴァイオリン商の衰退
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