楽器の事典ピアノ 第7章 ピアノの種類およびその構造と機能  5 内部の構造・機能 構造的な部分

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                     [画像]チューニングピン

ピアノの形状・サイズとそれらの性能の差異

内部の構造・機能
 
 ピアノの内部、つまりケースの中味は複雑微妙で簡単には説明できない
ものであるが、これを性能的に分類すると、(1)構造的な部分、(2)音に直接関する部分、(3)機械的な部分とに区別することができる。
 以下、そのそれぞれを取り上げてみよう。
 
構造的な部分
 
 ピアノの構造的な部分としては、ピアノの背面、鉄骨(アイアンフレームまたはメダルプレートと呼ぶ)、ピン板(ピンを含む)とがある。
 
 ピアノの背面--たて型の場合、ピアノの背面には通常、松やスプルースで作られた太い柱が数本立っている。しかし、その数が多くて太ければ必ず優れたピアノというわけではない。
 この柱は支柱(バックポスト)と呼ばれ、斜めに取付けられたものや他の手段で強度を保つため本数を少なくした楽器もある。グランドピアノでは、裏側から見ると必ず太い柱で作られた骨組みが見える。これも支柱であり、他の部分を加えてウッドフレームと呼ばれている。どちらも鉄骨とともに強大な弦の張力に対応しており、両者の関連性で、間隔、太さ、角度が定められるものである。
 
 鉄骨ーー普通、黒鉛を25〜50%含んだグレイキヤストアイアッとよばれる鋳鉄で作られる。鉄骨は、莫大な弦の張力に対抗すると共に、弦の振動が伝わるのを阻止する性質を持つ。その材質は金属疲労の危険性がなく。また、いささかの湾曲や変形も許されないものでなければならない。そのため、鋳造されてから長い間野ざらしに放置されその安定性が確認されてから使われる。鉄骨には厚さ。重さ、形状などの点についてさまざまなものがあるが、いずれも弦の総張力に対して絶対の耐久性を持つほどの強度が要求されるものである。
 なお、鉄骨の内部に鋳巣や粒子の乱れがあると、折損などのトラブルの原因となる。
 特別な衝撃を与えないのに破損が起き九時は、明らかに製造上の欠点ということができよう。しかし、やたらに厚みを増しても音質に問題があり、鉄骨の設計と鋳造法はピアノ作りの重要課題である。
 鉄骨にはブランド名、型番、製造番号などがっけられており、ピアノの原籍をたずねるときの有力な手がかりとなる。なお、鉄骨は普通、美しい金色に塗装されている。
 
 ピン板(チューニングピンーブロック)ーー別名レストプランクとも呼ばれ、わかりやすくいえば、バイオリンの糸巻きを保持している糸倉の役目をしているものである。ピアノの場合、1本80キロから90キロにおよぶ張力がかかるチューニングピンを支えるために、いろいろな工夫がこらされている。
 たて型のピアノでは、ピン板は背板の上部に接着され、材質は硬いカエデなどの薄板を木目を一枚ずつ直角にして張り合わせたもので、その数は4、5枚から最高41枚のものもあり、これにチューニッグピツが弦の数ほどネジ込まれている。
 なお、鉄骨の上部とピンブロツクと支柱の上部は、確実にネジやボルトで止められており、鉄骨は背面の両側および支柱下部に固定される。
 このようにして弦の張力に対抗するためにピアノの背面と鉄骨とピツ板は互いに確実に組み合わされて作られているのである。
 チューニングピンはピアノの弦の一端が巻きつけられているおよそ直径7ミリ、長さ6.3センチほどのピンである。重さは16グラムほどであるが、良質の特殊炭素鋼が使用されており、表面に防錆加工がほどこされている。ピン板内部に入って回転する部分には、細かいネジが切られており、角柱形の頭にチューニングハンマーの先端がはめ込まれて調律が行われる。
 メーカーにより、ごくわずかに形が違うので。専用チップ(ハンマー先端の部品)を使った方が調律しやすい。100年も昔の古いものには角柱部が矩形のものや。直径のごく細いものもある。
 フレームの穴とピンの周囲とを安定させるために木片のリングがはめ込まれており、これをチューニングピンブッシングと称している。
 以上述べたピアノの構造的な部分、つまり背面(木部のフレーム)、鉄骨およびピン板の三者は、互いにそのバランスをとることによって、莫大な弦の張力(ピアノの種類によって異なるが20トンにもおよぶものである)に対抗して、楽器全体の安定性を得ることを目的に作られるものである。
 しかし、これらの機構の設計はメーカーあるいは機種によってそれぞれ異なるもので、これが最高であるという決定版はない。例えばある種のたて型のピアノでは、鉄骨とピン板が一体として作られている場合もある。この場合、背面の柱の数は少なくてすむし、なお、他の方式としては鉄骨の強度を大きくして柱を除いたものすらある。
 つまり、一般に信じられているように、背面の柱が大きくて数が多いほど狂いの少ないピアノであるというのは必ずしも正しくない。
 このほかに、どこにも属さない重要部にワイヤー押えがある。プレツシヤーバー、アグラブは単品の部品であるが、フレームに組込まれているベアリング(弦の角度づけ)もこの一種である。これらは調律保持の要点であるとともに、バイオリンの左手のポジションに相当する重要性があり。音のエネルギーを逃がさないようにガッチリと弦を固定しなければならなし
 結局、その構造の形式にもよるが。概して重量のあるピアノほど安定性が高いといい切れるであろう。小型の軽いピアノは移動するのには都合がいいがよ目質その他に問題が残る場合が多い。




改訂 楽器の事典ピアノ 平成2年1月30日発行 無断転載禁止


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