楽器の事典ピアノ 第4章 日本の代表的な2大ブランド GSシリーズ

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GSシリーズ  


 現在、ピアニストにとってスタインウェイが理想に近いピアノであることは疑いもない事実だろう。その音量の豊かさと、音色の透明さ、ブリリアントさなどが現代人の感覚にマッチして、1部の例外を除いてほとんどの演奏家はこの楽器を愛用している状態である。
 従来、カワイのグランドピアノは、その音色が重厚で、カワイ独特の丸みを持った美しい音であった。しかし、その反面、高貴な音を追求し過ぎて、いささかパーカッション的な輝かしい音色が不足気味であった。
 しかし、先に述べた研究陣の長い年月にわたる研究の結果、極めて大きなダイナミックレンジをもち、さらにレスポンスが早い、近代的演奏法に適した理想的なグランドピアノが誕生したのである。これらはGSシリーズと呼ばれ、現在までにGS-100、GS-80、GS-50、GS-30などのグランドピアノが既に作り出されている。これらの性能は非常に優れたもので、スタインウェイにも匹敵するといわれている。
 GS-301一九七九年四月から発売された。グランドスペリアルと呼ばれ、設計も機構も革新的で、奥行きは一・八五メートルで、ピアノを専攻する人々の家庭での練習用として最適のものである。
 GS-801‐GS130に引き続いて一九八〇年五月に発売された。その音色やタッチの優秀さはいうまでもなく、セミコンサートと呼ばれてはいるか、その奥行きは二・五〇メートル(この規格に近いコンサートピアノは世界のメーカーのいずれにもない)で、フルコンサートとも呼ぶことができるものである。このGS-80は中小ホール(収容五百人前後)に最適といえるだろう。
 このGSシリーズは、この四機種だけでなく、今後、次々と新しい機種が作り出されるものと推定される。
 以下、その特徴を列記してみよう。
☆音色がブリリアントで、若い奏者に好まれ、特に高音部の伸びがばらしい
☆タッチが軽く、しかも敏感。ピアニッシモは繊細、フォルティッシモも雄大でダイナミックレンジが極めて大きい。つまり、パッセージの早い現代曲の演奏も容易となった。
☆弦の張力をやや弱くした、現代のピアノの総張力はおおむね十六〜二十一トンの間であるが、この範囲にあっても高めの張力のピアノと低めの張力のピアノとでは音量や音質に差がでる。比較的高い張力のピアノは"音量が豊か”で"音に迫力と力強さがある”といわれ、逆に比較的低い張力のピアノは翌日が華やかで明るく” ぶ目色の変化の幅が大きい”といわれている。新しい音を求めたGSシリーズの弦設計は、比較的低い張力設計をペースに低応力化(弦の単位断面積当たりにかかる張力を応力という)し、美しい倍音成分が得られ、しかも弦疲労を軽減したものである。なお響板のクラウンもこれに対応して設計変更されている。
☆中、高音部に、スタインウェイ同様、アリコートシステムがつけられている。アリコートシステムとは、わかり易くいえば、振動する弦の延長上の弦を共振させて、高倍音を出させて、音色を美しくする装置である。
 カワイの説明では、普通は振動させないバックストリングス(駒からフレームのヒッチピンまでの弦)やフォアストリングス (チューニングピンからベアリングまでの弦)に金属製の特別な弦枕を入れ、この部分の弦の長さと、本来の発音部分の弦の長さ(スピーキングレンス)との比率を、一対四とか二対三のように単純な比率にして倍音が発生し易くして、中高音部の倍音構成を豊かにする装置をアリコートと呼ぶ。アリコートとは、”割り切れる”とか。整数比”という意味である。
 この他の特徴としては、☆側板のカワイ独自の積み上げレンガ方式、☆フレームの強化、☆イギリスのロイヤルジョージフェルトの採用による特殊な(ンマーヘッド、☆シュワンダータイプTンングルスプリング)の新設計のアクション、などがある。なお、GSシリーズの譜面台は、楽譜の書き込みに便利なように、二十度、七十度、七十五度、八十度に調箙できるように工夫されている。


改訂 楽器の事典ピアノ 平成2年1月30日発行 無断転載禁止


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